□遊戯
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それに対し骸は、一瞬切なげに目を細めたかと思うと、次の瞬間にはいつもの余裕な態度でほくそ笑んだ。

「クフフ…何が何でも逃げ出してみせますよ…」

それがただの虚勢であることなど、口にした本人も、白蘭も分かっていることである。
力を封じられている以上本来術士である骸は持久力も体力も人並みで、武術に才があるわけでもないので、この状況を打破するすべなど元から持ち合わせていない。
しかもこの通常なら有り得ない状況下の中骸は酷い扱いこそ受けなかったが、渡された食事にも口を付けず、否、食べても殆ど吐き出してしまうため体は弱る一方だった。
倒れるのも、時間の問題だ。

「君も強情だよねー。分かってるだろうに」
「君が何を言っているのか全く分かりませんねぇ」

あくまでも嘘吹いてみせる骸に白蘭は呆れ笑いを、一つ。
自分の体の事だ、自分で一番分かっているだろうに。
それでも骸は、創られた精巧な笑みを絶やさないのだ。
どうすれば骸のあの張りついた様な笑みを消し去る事ができるのだろう?と白蘭は考える。
無理やり蹂躙しても面白くはない、骸のことだから心までも揺さぶる事はできないだろう──…。




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