二人の軌跡

□潤んだ瞳と少女
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ブライト家にて。
エステルはいつもの時間通りに夕食を食べ終わり、依頼で王都まで行っているヨシュアの帰りを待っていた。
出掛ける前、夕食はご馳走してもらえるという話だから、とヨシュアは言った。それから、昨日の煮物が少し残っているから、と付け加えて。
そんなお母さんみたいなこと言わなくたってわかってるわよ…と、エステルはむくれたが、すぐにいつものように彼を見送った。

「ふぅ…暇ねぇ…」
エステルが思い出すのは幼少の頃。よくこんな風に父の帰りを待った。…ヨシュアがきてからはそんなことも減ったが。
と、
「ただいま、エステル…」
カチャという扉の音とともに聞こえてきたのは、ヨシュアのどこか虚ろな声。
「お帰りなさい…って、どうしたのよ」
今日の依頼でそんなに疲れたのかしらと、エステルはヨシュアに暖かいココアを渡しつつ思った。

「ん…ありがとう、エステル…もうお風呂はいった?」
「えっ?…ううん、まだだけど……なんで?」
「ごめん、先に入っていいかな…」
よっぽど疲れたのね、と、エステルはヨシュアにタオルを渡した。

そして二人はいつもとは違う順番で入浴した。
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