彼女の幸せ

□スキナヒト
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それは花の一言から始まった。





とある昼休み 教室にて


本日、恭弥が用事があるために、茉莉は京子と花の二人と机を向かい合わせ、三人で弁当を食べていた。
京子は母親の作った女の子らしい可愛らしいもの、花は購買のサンドイッチ、茉莉は勿論自分で作ったものだ。今頃屋上では武が量こそ違えど、同じものを食べているだろう。恭弥も草壁に託した同じ弁当を食べているはず。

発端は、その弁当だったのだ。

「あんたのそれ、自分で作ったんでしょ?」

指差す花に、茉莉は首を傾げながらも頷いて見せた。

小さな弁当箱の中身は、筑前煮、ほうれん草のゴマ和え、胡瓜とワカメの酢の物、豚肉の味噌焼き、キャベツの浅漬け、玉子焼き。

中学生の作るものとは到底思えない。

けれど自覚のない茉莉は、なぜそんなことを訊くのかわからず、不思議そうにするだけだ。

「凄いねー、茉莉ちゃん。私こんなに作れないよ」

ふわふわと笑う京子が言うが、茉莉は毎日作ってるから、と困った顔をする。
花は茉莉が褒められ慣れていないのだと察して溜息をついた。
茉莉は可愛い。
それはもう、可愛い。
小動物的な可愛らしさでもあり、妹的な可愛らしさでもある。
つまり、庇護欲をそそられるという意味だが。

そんな茉莉にはあの最凶風紀委員長の雲雀恭弥でさえ過保護に接するくらいで、気が付けば茉莉の周りには有名人ばかりが現れている。

自分の魅力を知らない茉莉は、一度気を許した相手には無防備に可愛らしい笑みを向けてくれるし、無条件の信頼を寄せてくれる。

「茉莉」
「?」

なあに、と首を傾げる様は子供のように無邪気だ。

「好きな人とかいないわけ?」
「?…みんな好きよ?」

花は愕然とした。
茉莉が純粋なのは知っていた。
だが、ここまでとは思わなかった。

「…その「好き」じゃなくてね」
「好きに種類があるの?」

こりゃ最初から教えなきゃダメだわね。

一つ溜息をついた花は、説明するべく口を開いた。
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