彼女の幸せ

□意外な彼の意外なところ
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可愛らしい青いワンピースを着た茉莉は、慎重に道を歩いていた。
行き先はツナの家。
奈々に味を確認してもらうのを兼ねて、煮物のお裾分けに持ってきたのだ。
隣には武が歩いている。その手には煮物の包み。

「やっぱ手繋ぐかー?」
「…ん」

ここまで一人で歩いてきたものの、やはり武に手を引いて貰ったほうが転ぶ可能性は格段に低くなる。
茉莉は大人しく兄の手を握った。
キュッと握られて見上げれば、武は心なしか嬉しそう。

「…お兄ちゃん。ツナ君いるかな?」
「いるんじゃね?用事あるとかは言ってなかったのな」
「そっか」

コクンと頷いた茉莉の背丈は、武よりも頭一つ分ほど小さい。
その小さな片割れを見る彼の目は、いつもよりも優しく温かいものだった。





 ピンポーン


チャイムを鳴らすと、奈々が笑顔で迎えてくれた。

「武くんに茉莉ちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは、ママン」
「こんちは。ツナいますか?」

訊ねながら招かれて上がり込む武に続き、茉莉もそろそろと靴を脱いで上がる。

「ええ。リボーンくんとお勉強してるわ」
「じゃあ俺先にツナんとこ行ってるな。階段気をつけろよ」

しゃがみこんで自分と兄二人分の靴の向きを揃える茉莉の頭をクシャと撫でると、武は階段を上がっていった。
茉莉は奈々についてキッチンへ。

「…ママン、煮物作ってみたから…味見、してください」

大きな目で見上げる茉莉の頭を撫でて頷いた奈々に、茉莉もふにゃりと笑みを浮かべた。


「うん!美味しいわぁ。茉莉ちゃん上手になったわね!」
「…よかった」

褒められてはにかむ様子は可愛いの一言だ。

「ちゃおっス」

いつの間に来たのか、ちょこんと席に着くリボーン。

「リボーン、さん…こんにち、は」
「茉莉、俺にも煮物くれるか」
「、はい」

奈々に小鉢を借りてそれに煮物をよそう。
差し出された器を受け取り、小さな手で器用に箸を操って煮物を口に入れると、リボーンはニッと笑ってギュッと手を握り緊張した面持ちで感想を待つ茉莉を見上げた。

「美味いぞ」
「…よかった」

ほぅ、と息をつく茉莉に笑みを浮かべ、箸を進める。
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