彼女の幸せ

□静かな刻
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「今夜はなんなの?」
「えと…はまぐりのおすいものと なのはなのおひたしと たらのめのすみそあえと おさしみ」

随分と豪勢だ。

「今度僕にも作ってよ」
「おうちにきてくれるの?」
「茉莉が僕の家に来るんだよ」
「きょうちゃんのおうち?」

首を傾げる茉莉に、恭弥は肯いて答えた。

「来年から一人暮らしだからね」
「きょうちゃん五年生なのに?」
「関係ないよ。僕が秩序だからね」

そんな理不尽な。

それでも茉莉は「そっかぁ」と納得してしまっている。
長い付き合いで、恭弥の「普通」に慣らされてしまったようだ。

「後はなに買うの」
「なのはなと、おさけ」
「お酒?」
「きょうは、おかあさんのたんじょうびだから…おいわい なの」

そう話す茉莉は少し楽しそうだったので、恭弥は「死んだ人の誕生祝いってするもの?」という疑問を飲み込んだ。

「きょうちゃんの おたんじょうびも、もうすこしだね」
「…ああ、そうだね」

すっかり忘れていたといった恭弥の様子に気付いた茉莉は、おかしそうにクスクスと笑った。

「きょうちゃんたら、いつもわすれてるのね。でも 茉莉がちゃんとおぼえてるよ」
「うん。茉莉が教えてくれるから僕は忘れてても良いでしょ」
「うん」

茉莉はずっときょうちゃんといっしょ。

そんなふうに笑う茉莉は、恭弥にとって何よりも愛しい存在。

唯一変わらない気持ち。




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