オリジナル

□笑わぬ道化
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<第2夜 [表の世界へ]>




対象(ターゲット)
それを仕留め損ねる事なんて一度たりとも無いが…いつだって恐怖を抱いている。
人を殺す恐怖、殺されるかもしれないと思う恐怖…。
けしてそんなものではない。
俺が感じているのは“自分が消える恐怖”
自分が消えるというのはけして死を表すわけではない。
こんな風に裏で過ごしていく中で、自分という意識が消えて、人形のように、はたまた別の殺人鬼へと化すのが怖いのだ。



―――…ッんなコト考えてる場合かよ



余計なことを考えないようにと、表道りへと続く暗く細い道を行く。
壁により掛かってボンヤリとこちらを見る孤児や、ホームレスの呻(ウメ)き声をかき消すように、駆け抜けた。
湿っぽい路地から明るく賑わいのある大通りへと足を踏み出す。
口元まで隠れるコートを着ているというのに、たいして気にする人もおらず、当然というように通り過ぎる人々。
いや、当然というよりは彼の存在が無いかのように。



「――…ココか…――」



そして行き着く先は大きな病院。有名な病院。



―――…こんな所にいるなんて、やりやすいじゃないか




俺は静かに口角をあげてその建物の中へと入っていった。

(( さぁ、狩りを始めよう ))
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