オリジナル

□過去統べる道
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鮮血の最後…と言うのがあの時の俺にはぴったりだったかもしれない。
日課のようにリンチされる日々の中俺は死んだ。あっけなかった。
ただ、いつもより痛みが少なくて、闇に引きづりかまれるように意識がなくなっただけ。
やっとこのくだらないゴミのような人生からおさらばできると思ったのに…変な機械に吸い込まれるようにして“俺”はできた。
ただ初めは再びこの世界に縛られることに対しての絶望と、引き戻した世界への怒りしかなかった。なのに、日に日に人間そのものに対しての憎しみがまるで業火のように燃えだした。そして俺は身も心も残虐な殺戮マシーンになったはずだった。



「貴方はとても厄介ですネ



そう言って現れたデブで何処か憎めないそんな老人だった。
其奴は俺のことを“奇術師(ピエロ)”と呼び互いが利用し合ってきた。


そんな中だった。俺の前に彼奴が現れた。






【瀏の場合】
幸せそうに大事そうに女の人と接している奴が居た。
俺はそれに無性に腹が立った。『壊してやりたい』と心の底から自ら望み、彼等に近づいた。
愛し方を知らない、愛情や友情を知らない俺に対しても彼等は優しく接した。
そのうちに俺はそれを手に入れたくなって女の人の魂をガラス玉に封じ込めた。


それからは壊れていく一方だった。
俺の正体がばれ、彼からは命を狙われるようになった。


だけど、俺はそれでも良いと思っていたんだ。
それが報いだと初めは思っていた。
でもそうじゃなくて、たとえ憎しみという形でも彼が俺に対して気が向いていると言うことが単純に嬉しかった。そして、それはだんだんと俺の中で歪んだまま愛情となった。


「ヤッホ〜、瀏♪」


壊してでも良い、例えどんな形でも手に入れたかった。
だから俺以外を見ないように、俺を忘れないように酷く残酷な手を使って……
コレは子供のような独占欲が生み出した物。
解ってる…だけど…愛しい彼を手に入れるために……――――――――――――――――










【シゼンの場合】
其奴…改め千年伯爵が俺の元へ裏切り者だと言って連れてきた彼は造華(ゾウカ)のように美しく、だが、何か引っかかる物を抱いた青年だった。

何となく気になっていた彼は俺の操れるレベルではなく、そして何故か常に側にいた。
別に命令したわけでもなければ願ったことでもない。
ただ彼は俺の側についてまわった。
そして、それ故か他のAKUMA(手下)達より気にかけるようになってしまった。


「おい、置いてくぞー!!」


いつの間にか側にいるのが当然になって…そして事件は起きた←







「好きだ…愛してる…」








突然言われたその言葉には欠片も嘘は感じられず、本気だった。
だからこそ怖くなった。近づきすぎたと後悔をした。
仮面を…いつもの仮面を…
そうして被った仮面はいつもの俺で…だけど日がたつにつれてそれが嬉しくてたまらなくなって、苦しくなって…どうしようもないくらい嬉しかった。






俺も…俺も愛してるよ







彼から離れて、誰も居ない俺だけの空間で何度もそう言った。
愛おしくてたまらなかった。だから、何度も、何度も愛してると言葉に出した。
今思えば彼にそれが聞こえていたのかもしれない。
なんて…疑いすぎだろうか?


「ジェーン、愛してる」


そうして俺は今日もまた何も考えなくなるほど嬉しいその言葉を大好きな奴から聞くんだ。
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