オリジナル
□過去統べる道
4ページ/7ページ
出来損ない…と言うのはつまりちゃんとした子供じゃないという意味で。
そして俺はその出来損ないとして“ロリアス”家に存在した。
「兄様ぁ!俺ファクスト家のお嬢様の婚約者になったんだよっ!!」
『出て行けミスト。また義母様に怒られるぞ…』
年の差のある義弟が俺には居た。彼は義母様にとても可愛がられていた。
ちゃんとした子供のミストはみんなに愛され、そして彼自身愛する人ができたと喜んだ。
コレが正しい人間の姿だと俺は思っていた。
だからこそ…俺は人間ではないと………そう思わざるを得なかった。
「アンタなんか居なければ良かったのよ!!この出来損ないがッ!!!!」
そう言って俺は休む暇もないくらい暴行を加えられ、罵声を浴びて…それでも生きていた。
早く死ね、早く死ね、と永遠と言う義母様の願いとは反対に俺は喰らい牢獄の中生きていた。
鎖に繋がれ、傷の治療もされないままで生きていた。
父様も俺を嫌っていた。
父様と俺の母様は所謂不倫相手という愛柄で、だから父様には俺の存在が邪魔だった。
だけど俺は母様によく似ているらしくて、父様は水と食料だけは俺にくれた。
だから、俺は生きていた。
「兄様♪」
だけどミストは俺を好いていた。
あの日までは………・
「アンタなんか兄様じゃない。ただのクズだ!!」
幼さを残すその姿でそう吐き捨てそれ以来俺の場所には来なくなった。
そうして俺は僅かな自由を得た。
来なくなったことで俺の場所には誰も寄りつかなくなった。
そして、俺はあの少女に会ったんだ。
「初めまして?」
とても綺麗な少女。俺にも優しくしてくれた。
すべてを包むようにそして許すように俺に優しく接してくれた。
『初めまして、リラ様』
本当は知っていたんだ。ミストの想い人だって。
だけど…
『とてもお綺麗ですね』
俺だってこの優しさを手に入れたかった。
『ほらリラ!早く来いって!!』
それから毎日のように牢を出て彼女にあった。
たくさん話して、たくさん遊んで、今までのことが嘘のように楽しい日々を送った。
そして……ついに義母様にばれてしまった。
「最低ね…… もう良いわ…死んでしまいなさい!!」
そう言って義母様は俺の首に包丁を突き当てて切り裂いた。
一瞬だった。目の前が真っ赤に染まり、意識が一気に闇に引きづり込まれた。
あぁ、やっと死ねるんだって…そう思ったのに…
青白い光がその傷口を包み俺は死ねなかった。
それからだった。義母様は俺に平気で死ぬほどの傷を付けるようになった。
そして、ボロボロになったところをあの子に…リラに見つかって……
その数日後俺は自由になった。
枷が外れ、旅に出た。
これ以上此所に…ロリアス家にいてはいけないと……
「アンタは…私たちと同じではいけないのよ……アンタなんか…」
義母様とまともに話したのはコレが最後だっただろう。
『悪ィな…サンキュー。次は迎えに来るから』
ただ、彼女が居るであろう城に向かってそう言うと俺はユックリと街を出た。
この日が…俺がレクイ=ジン・ロリアスとなった日であろう……