オリジナル

□過去統べる道
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俺は昔から人の音を聞くことができた。
一族のみんなが持つ瞬間移動能力はないのに…ココロの音を聞くことができた。
そして醜い音色を奏でる馬鹿な人間をただただ俺は消していった。
ソレはたいていが俺の引き取り手、ようは義理の親に当たる存在だった。



「リラ様に愛想良くして、内に多大な利益が入るようにしなさいよ?」




両親の優しさなんて物は得たくても得られなくて、手が届かなくて、何もなくて。
だからこそ余計いらなかった。
醜い人間が親だなんて思いたくない。
そういう俺の音はいつも無と言っていいほど消えそうで、静かな音だった。






俺の幼なじみに当たるルナはとても無邪気で、明るい音をしていた。
だからだろう、側にいるときが楽でココロが安らいだ。



「ごめんね〜?姉さんが行くならボクも行かなきゃね〜?」




その一言を残してルナは去っていった。
そうして俺はまたくだらない両親達とくだらない家族ごっこをした。




長い時間が過ぎて、そして俺はようやくルナの居場所を探り当てた。
その道中だった、あの女に会ったのは…




心の底から綺麗だと思った。
海の波がキラキラと太陽に反射して、微かに吹く風が彼女の舞をよりいっそう引き立てた。








「スッゲェ」







俺は彼女に拍手を送り、そして笑みを向けた。
彼女の音は俺と同じで無音に近い静かな音色だった。
別に親近感がわいた訳じゃない。ただ、心の底から本当に綺麗だと思ったんだ。
だから…


「俺と一緒に行こうよ」


そうやって記憶がないのを良いことに俺は彼女を連れ出した。
たどり着いたのは黒の教団という其所。
ようやく見つけたルナの音は悲しみに染まっていた。




ソレは…俺の嫌いな本当の両親と同じ音…




だけど俺は新しい光を見つけていた。
俺にとっては優しい音色…



「名前、言ってなかったね…俺はユキサ・ディーラグニエ。まずはそこから覚えてな?」





柔らかく笑う俺は俺のようじゃなくて、でも、ようやくそんな自分が好きになれた。
そしてタブン彼女のことも…



真っ白な音に色を付けて行くみたいで楽しくて、そうして俺にスズのような明るい音が混ざった。
まだ少ないけれど、きっとこれからも増えていく。
俺だけの…ココロの音色が











そして物語は始まった
(大好きな君の音だから良いんだ)
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