及川さん家の妹さん

□バルス
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私はあまりアウトドアな性格ではない
外に出るのには女の子としてやはり服や髪型を気にしなくてはいけないし、なによりそれがめんどくさくてよっぽどのことがない限り基本は家で休日を過ごす



そんな私の休日




*6:30*


バタバタと廊下を駆け回るお兄ちゃんの足音がする
寝坊したんだなーなんて回らない頭で考えると不意に私の部屋のドアが開く
年頃の女の子の部屋だぞ、ノックしろよ
でも眠いから怒る気にもなれなくて反応を見せない



「玲奈ちゃんおはよ、今日も頑張ってくるね」



私を起こさないように小さな声でそう言い、頭を撫でて部屋を出ていくお兄ちゃんは毎日こんな感じで寝てる私に挨拶してから朝練にいく



*12:45*



太陽が真上に登る頃私は活動を始める
リビングに降りていくと誰もいなかった
どうやら今日も父母共に仕事らしい、休日なのにお疲れさまです

お腹があまり減ってなかった私は冷蔵庫に入っていたヨーグルトを手に取り、テレビを見ながらそれを食した




「ただい、あっ!玲奈ちゃん!おはよー!」

「早かったね」

「今日はお昼までだったんだよー…って玲奈ちゃん!またそんなものばっかり食べてる!!」

「お腹すいてないんだもん」

「ダメ!ちゃんとご飯たべなきゃ!」



ほらほらこれ食べて!なんて渡されたのはコンビニのサラダ冷麺で、テーブルを挟んで向かいに座ったお兄ちゃんはそれの大きいサイズを開けていた
さすが運動してる人は食べる量が違うな



「玲奈ちゃんご飯食べてないなーって思って玲奈ちゃんの分も買ってきたんだー」

「…どうもそれはご丁寧に」



こういう気配りが女の子はやられるんだろうなと思いながら私が冷麺のフタを開ける頃にはもう、お兄ちゃんが手にしている冷麺の器にはほとんど中身が存在してなかった

食べるの早すぎだろ

あ、これ想像してたより美味しい今度学校のお昼用に買っていこう



「あはっ」

「…思い出し笑い?ムッツリなのね」

「思い出し笑いじゃないしムッツリでもないよ!酷い玲奈ちゃん!!」

「じゃあ何よ」

「いやー想像してたより美味しかったんだなって思って」

「え、どうして分かったの?」

「そりゃあ俺の玲奈ちゃんだもん!」




玲奈ちゃんの思ってることなんて何でも分かるよと、お兄ちゃんは頬杖をつきながらこっちをみて微笑む

その姿がカッコ良くてああやっぱりムカつくけどイケメンなんだなって改めて思った



*15:40*



金曜の9時から入る地上波映画の録画していたのをお兄ちゃんと見る

今週は飛行石を巡るアニメだったのか、バルス



「ねー玲奈ちゃんデートしようよー」

「何言ってんの今良いところだから話しかけないでバルス」

「え?何で今お兄ちゃんに滅びの呪文唱えたの」

「何が楽しくて自分の兄とデートしなきゃいけないのよ。そんな悲しいことするくらいなら彼氏とデートするわ」

「え?彼氏?!いるの?!」

「いたらこんなとこでお兄ちゃんと録画した映画なんか見てないわよ」




俺の玲奈ちゃんだもーん!俺より凄い人じゃないと許さないもん!なんてすがりついてくるこの人は絶対に高校三年生じゃない



*19:17*



我が及川家は両親共働きで一般家庭とは違い土日に親が家にいることが少ないため、土日の食事は大抵私が作る

だってお兄ちゃん部活で疲れてるのに食事まで作らせたら死にそうだし
それ以前に休日は常に家でグダグダしてる私がやった方が罪悪感が生まれない

でもこれも結構大変で、スポーツマンなお兄ちゃんに″栄養も量もある料理を″と考えるのが非常に悩ましい

まぁ基本何を作っても食べてはくれるのだけど




「お兄ちゃんご飯出来たよ」

「わー今日も美味しう!玲奈ちゃんまた腕上げたね!!」

「そう?まぁ毎週作ってるからね」




いただきますと言って私の作ったご飯を美味しいと頬張るお兄ちゃん

ねぇお兄ちゃん恥ずかしいから言わないけど私、お兄ちゃんに褒められるの昔から大好きなんだよ

苦手だった料理もお兄ちゃんが美味しいって褒めてくれるから沢山失敗して、それでも頑張って、色々憶えて今ではこんなに得意になったんだよ



「んー美味しい!やっぱり玲奈ちゃんの料理は最高だね!明日岩ちゃんに自慢しちゃおーっと」

「はいはい」



あぁ、次は何を作ろうかな





バルス
(滅びて欲しいのは素直になれない性格)




何だかんだいってお兄ちゃん大好きな妹ちゃん

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