兼続日記
□兼続日記・1
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永録七(1564)年越後でのこと。坂戸城主である長尾政景が、宇佐美定満と舟遊びの最中に溺死する。
それは、上杉謙信に密命を帯びた宇佐美が、暗殺したとも噂されている。
あ――いやいや、俺にとっては暗殺かどうかなんて、ど―でもいいの。
それより、あの戦国に名高き名将上杉謙信を生で見れるっ――ことのほうが肝心なんだよ。
――――生だよ生謙信!!
どんな奴なんだろうな謙信て、俺にとってはめちゃくちゃ楽しみなわけよ。
えっ、何?
俺の事気になる?
いや、あんまり気にしなくてもいいぞ。俺ってたいした奴じゃない、まして六歳のガキだぜ。
一応、俺の父は武士。ちょうどいま話題の坂戸城に勤めている偉いさんだったりする。
父の名は樋口惣右衛門(ひぐちそうざえもん)、俺は与六(よろく)って名で呼ばれてる。
一応、長男。もちろん将来は父の跡をついで、のんびり城の勘定方でもしようかと思っている。
実はさぁ、俺ってば二十一世紀からこっちに転生しちゃったらしいんだ。
もとの俺は、三十路を越えたしがない会社員。勤め先は、斜陽ぎみな某IT企業。
不況の煽りををモロに受けた会社はリストラを決行、社員は激減、なんとか生き残った俺逹にはスーパー残業という罠が待っていた。
俺の死因は、いわゆる過労死ってやつらしい。
だからバリバリ働いて出世を目指すつもりはない、まして過労死なんか二度とごめんだ。
とりあえず俺の夢は、高望みはせず、まったりとお気楽に長生きして、のんびり田舎のスローライフを楽しむぜってこと。
もちろん可愛い嫁もらって、ウハウハ気楽に生きるんだ。