sss
□無菌室
1ページ/1ページ
ビニール越しに触れる手と手
私と君は泣きながら「ごめんね」を繰り返す
もう触れられない
手を握ることも
キスをすることも
抱きしめることも
その涙を拭ってあげることも出来ない
今の私にとっては大好きな君でさえも黴菌なんだ
「俺、なんもできないよ・・・」
「ね、智」
私が呼ぶと君が顔を近づける
「どうしたの?」
「最後にお願い」
「最後って・・・」
悲しそうに笑う
ごめんね、私がこんなんになっちゃったから
最後に見るのは君がいい
私のお願いを聞いた君は戸惑った顔をしたけど
いいよ、と言ってビニールの中へ入ってきた
優しく唇に触れる君
「これで、いい?」
「ありがと・・・」
あとはお迎えを待つだけ
無菌室
(3分後には血を吐き出して逝くから)