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□紅葉と秋空
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何か、言わなくちゃ。
でも、何を言えばいい?
「そうだね」って言うのか?
嫌だ、離れたくない。
じゃあ、「嫌だ」って駄々をこねるのか?
留三郎を困らせたくない、女々しい奴だと思われたくない、嫌われたくない。
それだけは嫌だ。
「えっと……その……」
どう答えたらいいのか、わからない。
心臓は不安でおかしくなりそうだ。
焦るばかりで、思考がまとまらない。
どうしたらいいのか、わからないまま伊作は黙ってしまった。
二人の間に沈黙が続く。
沈黙が続いた後、伊作は後ろから抱きしめられた。
背中から留三郎の温もりが伝わってくる。
回された腕を伊作はギュッと握った。
瞬きをすると、涙が頬をつたい零れた。
留三郎の腕に伊作の涙がポタリと落ちる。
すると回された腕にさらに、ぎゅっと力が込められた。
伊作の肩に留三郎が顔を埋めてきた。
「留三郎?」
伊作が声をかける。
「すまない。さっきのは忘れてくれ」
「どうして……」
「これから先、お前が傍に居ない将来を考えたら、ものすごく恐くなった。もしかしたらお前も同じなんじゃないかって。お互いがダメになる前にこの関係をやめたほうがいいんじゃないか。なんて思ったが、今離れるなんて無理だ」
「うん……」
「俺はお前が居ないとダメだ。お前と一緒に居たい」
「留三郎……」
(僕もだよ)
その言葉を声に出すことができず、伊作は頷いた。
胸が締め付けられるように痛い。
きっと留三郎もそうなんだと思う。
「今は一緒に居られる。それだけでいい」
「うん……」
「将来のことは、その時が来たら二人で考えよう」
「そうだね」
「変なことを言って、すまなかった。お前を悲しませてしまった」
「いや、いいんだ」
「まだまだ子供だな。俺は」
「嫌でも大人になる時が来るさ」
伊作は留三郎の方へ顔を向けた。
精一杯の笑顔で。
留三郎も顔を上げる。
頭をコツンとぶつけ、見つめ合い微笑み合った。
そして、軽く口づけを交わす。
まるで誓い合う様に。