【rkrn】

□こなゆき
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空は鉛色の雲が広がっていて、ふわふわと粉雪が舞ってきた。

「どうりで寒いと思った。雪が降ってきた」

白い息を吐きながら伊作がつぶやく。

医務室の障子を少し開けて外を眺める。


「これは積りそうだなぁ。みんな風邪をひかなければいいけど……」

少し考えた後、伊作は火鉢の傍により、風邪薬を調合し始めた。

しばらくして、留三郎が医務室にやって来た。

「伊作、居るか? う! すごい匂いだな。何作ってんだ?」

医務室に入るなり、留三郎の顔がゆがむ。

「風邪薬だよ。こんなに寒いと絶対に誰か風邪をひくだろうと思って」

「なんて言うか、お前らしいな」

「ところで、何か用があったんじゃないのか?」

「ああ、特にない。寒いから火鉢のある医務室に来たかっただけ」

「なんだよ、それ」

そのまま、留三郎は伊作の隣に座り、火鉢に手をかざしながら伊作の作業を眺めた。

雪が降っているせいで、外はとても静かだ。

誰も外に出ていないのだろう。

こんな日に外に出るのは、物好きなあの二人くらいだ。


聞こえるのは火鉢のパチパチという音と伊作の動かす道具の音だけ。

ふと、伊作は留三郎の手を見た。

そして、無言のまま留三郎の手を自分の方へ引き寄せて見る。


留三郎の手は赤くひび割れ、血が出ている。



「おい、留三郎。手が酷いことになってるぞ」

「ああ、さっきまで外で用具の修理していたからな。冬になると手がどうしてもこうなる。大丈夫だ」

「そうだけど、痛いだろ」

「まぁな」

「ちょっと待ってろ。薬塗るから」

「そんなの塗ったって、すぐにひび割れるぞ」

「塗らないよりはマシだろ? ほら、つべこべ言わずに手を出せよ」

留三郎は渋々と手を差し出す。

「ちょっと、最初滲みるかもしれないけど、我慢しろよ」

「わかったよ」

伊作はザクロのように割れている留三郎の指に薬を塗ろうとして、止まった。

「ん? どうした、伊作」

急に動作が止まった伊作を不思議に思った留三郎が伊作に問いかけた。
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