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□紅葉と秋空
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『紅葉と秋空』



今日から忍術学園は秋休み。


留三郎と伊作は裏山がきれいに紅葉していると小平太から聞き、里に帰る前に紅葉狩りに来ていた。


裏山の山頂まで登ると、山は見事に紅葉していた。


葉が赤と黄に色づき、緑の葉と混じり合い、三色に染まった山が目の前いっぱいに広がっていた。


空気は澄み切って、夏の嫌な湿気は無くなり、薄い雲が高い空に漂っていた。


「おお〜! 見ろよ、伊作。きれいだな!」


留三郎が感動の声をあげた。


「うわー! 本当だねぇ」


目の前に広がる三色の景色に二人は感動の声を出した。



「小平太の情報も満更じゃないな。さすが毎日、山に登っているだけある」


「確かにね」


伊作は苦笑いしながら答えた。


「こんな絶景を見られるなんて贅沢だよねぇ」


景色に見とれている留三郎に対し、伊作はしみじみと言った。


「ああ、本当だな。しかし……あと、何回見れるんだろうな」


「え?」


留三郎の意味深な言葉に伊作が訊き直す。


いままで笑顔だった留三郎の顔が、一変して暗い表情になっていた。


「なぁ、伊作。おれたち離れた方がいいのかもしれないな」


山の向こうを見たまま、留三郎が独り言のように呟く。


留三郎の急な別れ話に心臓が止まりそうだった。



「っ……きゅうに、なに、言い出すんだ」


上手く言葉を、声を出すことができなかった。


伊作が訊ねても留三郎は黙ったまま、何も語ってくれない。


(留三郎、本気……なのか?)


だんだんと三色に染まった景色が滲んでくる。


いつの間にか目に涙が溜まっていた。                                                     
まばたきを一回でもすると涙が零れそうだ。


涙が零れないように、伊作はまばたきを我慢するのが精一杯だった。
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