CLANND×Fate

□略奪
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〜アーチャーside〜


(…まったく、私のいた世界とはまた随分と変わった展開となりそうだな)


まだ日も昇らぬ早朝、私は凛の屋敷の周りを見張るべく屋根の上に立ち、私の世界にはいなかった二人──三神悠と坂上智代について考えていた


(三神悠、昨日の特訓などを見る限り奴は私と同じ系統の作り出す魔術の使い手だろう…投影の上位種だろうがどんな魔術かまでは私では特定できん
詳しいことは凛に任せるしかないだろうな…)


昨日の悠が僅かだがハッキリと見せた魔術発動の輝きを思いだし、思考を進めながらも見張りのためにあらゆる方向に注意を払い、次は坂上智代について頭を巡らす


(凛と同じ学校の生徒、と言っていたが私が記憶する限り彼女のような人物が凛と同じ学校にいる、という記憶はない…やはり、悠と同じ「いないはずの者」だろうか…)


次に脳裏を過るのは自身がまだ「衛宮 士郎」だったころの記憶、その頃に彼女──智代を3年間の学校生活で見かけた記憶はない…はずだ
故に、彼女も本来いるべきではない存在ではないのか、と考え始める


(悠は自分から異世界からイレギュラーだと言っていた…だが、智代は自身を純粋なこの世界の住人と信じている
それに、凛と共に学校へ行った時にも見覚えのない人物が多かった──これは、町規模でなんらかの異常が起きている──?)


様々な本来「いるべきではない」者達に加え異世界からの使者…こんなあり得ない事が重なるなどそれこそ聖杯以上の奇跡──世界そのものに異常が起きているとしか考えられない
…だが、例えそうだったとしても今の自分には関係の無いことだ、今の自分は正義の味方、衛宮士郎ではなく遠坂凛の従者、アーチャーなのだから

そこまで思考を纏めると二人の出身等ではなく単純に戦力としての働きはどうなのかを分析する。


(智代は既に一流の体術を持っている上に悠との仮契約によって武器と魔力供給が得られている…が、対する悠は我流の体術に魔術は覚醒には今しばらくかかるだろう)


フ、とため息をついて苦笑する。
どう考えてもまだ二人は聖杯戦争を生き残るには弱い、やはりまだ自分がマスターとあの二人を守らねばならんのか、と考えると真っ直ぐと前を向く


「まだ──遠坂にはオレが必要か」


更に思わず昔の口調で呟いてしまった自分に対して自重を込めて笑う。


──そう、こんな風に戦いの最中でありながら昔を思い出すほど幸せだったからこそ油断したのだろう
下を向き、油断したほんの数秒の間にトス、と軽い音を立てて自身の背中に刺さる魔剣、その歪な魔剣こそ彼が警戒するべきだった魔女の持つ契約破りの宝具──破壊すべき全ての符であった


「…聖杯戦争の最初から貴方には目をつけていたのだけれどまさか隙を見せてくれるとは思わなかったわ」


「ク──キャスターか…!?」


自身が何をされかを理解するのにさほど時間はかからなかった、刺されたのは契約破りの"剣"
刺された瞬間にその効力など全てを理解した、この状況で抵抗しても無駄だという事も──


「…そうよ、そして今から貴方の主となる者よ
…よろしくね、アーチャー」


背筋を思わず冷たい汗が這う妖艶な、それでいてどこか不愉快な声
…今から何をしても間に合うまい、せめて自分が出来る事は凛達に危険を知らせる、それしかないだろう。


(すまない、気がついてくれ凛──!)


僅かに魔力を洩らし、防護結界を作動させる…情けない、凛が気がついたかどうかはわからないが既に体の自由は奪われている、今からどうすることも出来ないだろう


(ク──まさかこんな不覚を取るとは──)
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