真・恋姫†無双

□第一章
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「………みゅ」
キラキラと光る服を着た男が気持ちよさそうな顔をして荒野で爆睡している。陽が目に入ったのか少し身じろぎをしまた寝息を立て始めた。
「このお兄ちゃんもの凄く気持ちよさそうに寝ているのだ」
赤い髪の毛をした少女がその男の頬をふにふにと触っている。
「そうだねー。見るからに悪者ーって感じはしないよ?愛紗ちゃん」
ニコニコと桃色の髪の毛をした女性が男を見ていた。
「人を見た目で判断するのは危険です。特に乱世の兆しが見え始めた昨今、このようなところで寝ている輩を−−−−」
「ん……」
「っ!?桃香様下がって」
黒髪の女性が桃香と呼ばれた彼女を庇うように前にでる。
「え?……わわっ!?」
「このお兄ちゃんもうすぐ起きるかな?」
「こら、鈴々!」
「んん……」
男が再度ゴソゴソと身じろぎを始める。
「………」
「………」
「………」
「………おはよう」
男が綺麗な朱色の目をぱちくりと目を開けた。
「おはようございます。あの…大丈夫ですか?」
彼の目に写ったのは明らかに普通では目にしない服装をした女性三人組。
その中の一人が心配そうに彼の顔を覗き込む。
「ここがどこだか分からない以外は大丈夫だ。心配してくれてありがとう」
男はんしょと立ち上がってパンパンとズボンを叩き溜め息をついた。
「(まぁ…あれだけの魔力に包まれたんだ。どこかに跳ぶのは当たり前か)」
「ホッ。良かったぁ〜♪」
「少し聞いても良いか?」
「はい?」
桃色の髪の女性がたわわに実った女性の象徴の前で手を組み首を傾げた。
「ここって。……どこだ?」
「へっ?」
「記憶がちょっとこんがらがってんだ」
「ここは幽州啄群。五台山の麓だ」
黒髪をサイドで纏めた女性が横から答える。
「…………分からん。地理苦手なんだよなぁ」
「幽州啄群と言えばかなり有名な地名だぞ」
「知らないものは知らん。ここは日本…じゃ、無いよな?」
「にほん?知らないよ。お兄さん一体何者?」
「俺は梅外悠久だ。君達は」
「私は劉備。字は玄徳!」
「鈴々は張飛なのだ!」
「関雲長とは私のことだ」
「……なんかのコスプレとかじゃないよな?」
「こすぷれ?」
劉備と名乗った彼女が何のことか分からないと妙なイントネーションでかえした。
「お前ら本当にさっきの名前なのか?」
「そういう名前なのだ!」
「うんうん。ウソなんてつかないよねー。……ホント、お兄さんって何者なの?」
「自分でも良く分からなくなってきたな……」
「今は西暦2008年であってるよな?」
「せーれき?」
彼は頭を抑え小さく舌打ちをし、ついてねぇと呟いた。
「あのね、次は私が質問しても良い?」
「良いぞ、聞いてばっかじゃ悪いからな」
「お兄さんってどこから来たの?どうしてこんなところで寝ていたの?」
「原因は分かるんだが…何で寝ていたのかは分からない」
「うーん……じゃあね、お兄さん、どこの出身?」
「出身は九州の鹿児島だが」
「きゅーしゅー?そんな州あったっけー?」
「いや。聞いたことがないな。そんな州は」
「九州は州じゃないんだが」
「えっ?州なのに?」
「州なのに。もしかして洛陽ってある?」
「勿論あるよ」
それを聞いて彼は頭を抑え小さく舌打ちをし、ついてねぇと呟いた。
「ねぇねぇお兄さん。お兄さんってもしかしてこの国のこと、殆ど知らないの?」
劉備と名乗った少女が、何かを期待したような瞳に浮かべ、彼の顔を覗き込んだ。
「知らないな。三国志はあんまり好きじゃない」
彼は自分で言って気づいたのか深く溜め息をつき空を見上げた。
「タイムスリップか…」
「たいむすりっぷとはどういう意味なのです?」
「説明しろって言われてもなぁ…」
「ねぇ…愛紗ちゃん!鈴々ちゃん!この人きっと天の御遣いだよ!服が変だし!乱世を治めるために舞い降りた、愛の天使なんだよきっと!」
「あれはエセ占い師の戯れ言ではないのですか?」
「うんうん。鈴々もそう思うのだ」
「でも、東方より飛来する流星は乱世を治める使者の乗り物だーって」
「確かに占いからするとこのお方が天の御遣いということになりますね。武人としては優れてるようには見えますが…」
三人が値踏みをするように見られているがそれを気にしていないのか自分の鞄を見つけると中身を確認していた。
「んーと。 ウォークマンと携帯とモバイルノート。ソーラーチャージャーもある。これなら暇はしないな…二人も有るけど寝てるのか?馬鹿剣もか」
「なんと言うか…英雄たる雰囲気が感じられないな」
「そうかなぁ?そんなことはないと思うんだけどなぁ」
「やっぱり圏外だよな…ま。音楽でも聴くか」
耳にイヤフォンを入れ再生を始めた。テンポの早いロックが流れ沈んだ気分を浮き上がらせる。
「じゃあな。三人とも。ボチボチやれよ」
鞄を肩に掛けて歩き始めた。
「あの!待ってください!私達に力を貸して貰えませんか?」
劉備と名乗った彼女が悠久の袖をつかんだ。
「なんだ?」
イヤフォンを抜いて彼女に向き直る。
「私達はこの乱世を治るためにあなたの力が必要なんです!」
「ん?なんで?」
「あなたは天の御遣いなんです!この国じゃないところから来たんですよね?だからあなたは天の御遣いってことで確定です♪」
論理ですらないじゃないな…と苦笑を浮かべたがきゅぅ…と腹が鳴った。
「腹…減ったな」
「鈴々もおなか減ったのだー!」
「そうだねー」
「近くの町に移動しますか」
「賛成なのだ!」
「じゃあ、そこで天の御遣い様にも色々とお話を聞いて貰おう!」
「それが良いでしょう。では早速移動しましょう」

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