作品集

□2:蝉時雨
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姿は見えずともその存在を知らしめるかのように様々な蝉が鳴いている。
ただでさえ暑い夏を更に暑くさせるようで、鈴花はげんなりした。
非番だったが、外に出る気にならず涼を求め屯所の中をうろうろする。
蝉の声を遠ざけようとするが、容赦無く耳に入ってくる。
僅かに影になっている所を見つけて腰を落ち着ける。
目を閉じれば微かに風を感じ、不思議と蝉の声も不快にならない。
しばらくジッとしていると、人が近づく気配がした。
「ああ、ここにいたのか」
目を開けると、山崎と同じ監察方で文学師範である尾形俊太郎が目の前に立っていた。
「あっ何か?」
立ち上がろうとするのを制される。
「いや、君の姿が見えなかったから」
一瞬の静寂。
再び鳴き出す蝉達。
「…それだけですか?」
思わずそう問い返してしまった。
普段から表情を変えない尾形がひょいと眉を上げて、僅かにおどけてみせた。
「暑苦しい場所から君を連れ出そうと思ったんだけど、行くかい?」
その言葉に鈴花は微笑んだ。
「行きます」
立ち上がり、先に行く尾形の後ろを付いていく。
蝉の大合唱が追いかけてくる。
穏やかに過ぎる夏の日。




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花柳・尾鈴小説を書いていただきました!!
サブキャラの中でも人気の高い尾形さんですが、鈴花ちゃんとの絡みをゲーム中でも見たかったです!!
実はずっと気にかけてたりしたらいいですよねVv
雷貴さん、素敵な小説をありがとうございました!!

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