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□Focus
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「ジャーーーン!」セーラー服を着て、くるりと一回転して見せる

「は?まじ?お前きもいな」明らかに引いてる目

「高校のときの制服着て女友達とディズニー!これけっこう流行ってるんだよ?」
その帰りにおもしろそうだからまさの家に寄ったあたし


「女の考えは理解できん…」

「ねぇねぇまさもまだ学ラン持ってるでしょ!着替えて写真とろうよ。若返るよ」と可愛くウインク

そんなウインクにも冷ややかな態度
「いや、俺は今でも充分わけーから」

それでも
「ねーねー」
と何回も頼んだら
「ったく頑固なやつだよなぁ…」

嫌々ながらも頼みを聞いてくれる
そんなとこがまさは優しいと思う


「あはは!なつかしー!袖短くなってるじゃん」
「身長伸びたからな」

「お前は似合ってんな」
「え、そう?」
「中身が高校生だから」

げしっ
と蹴りをいれる

「ってぇ!」
「ひどいー」

お互い爆笑
こんな感じ、こんな関係が心地いい



「ほらデジカメ!」あたしはまさから離れ、テーブルの上でセルフタイマーに設定する


「…てかさぁゆうくんと撮ればいいじゃん」
「あー………」
「別れたのね」
「違う!ちょっとケンカしただけ!」
「それってやべぇじゃん」




「あーもうどっかいないかなーいい男」
「おーおー浮気ですかー?」


「あ、ホラ撮るよ!」
カメラを置いてまさの側に戻る


「…ピントが合ってねぇんじゃねぇの?」
「?合わないはずないでしょ。最新のカメラだよ?」
「だーよなー」と笑ったまさの声はなぜだか悲しそうに聞こえた




「うわーいい感じ!これ後で送るから」
「いらねーっての」



デジカメでポチポチ、昔の写真をさかのぼる
「…そうだ、まさは彼女と相変わらずラブラブなの?」



「んー…別れた」冷蔵庫を開けながらなんでもなさそうにそう言う

「…え!?な、なんで?順調じゃなかったの?」

「いやーーそんなでもなかったよ。あたしの事そんな好きじゃないでしょっつって振られた」


衝撃だった
まさは彼女をすごく大事にしそうなのに
でも確かに、まさの彼女自慢は聞いたことなかったかもしれない


「そっかぁ…」
「んーだよ、俺落ち込んでねぇって」
ひょいっとお酒の缶を投げられる


ぱしっ
と受け取るあたし


「いやでもあたしいつも自分のことばっかりで、まさの悩みとか聞いてなかったなぁって」

うんそうだ
ほんとにあたしばっかり相談していた
高校のときから、ずっと



「だからさっなんかあったらあたしにも話して!頼りないとは思うけど!ち、力になりたいから!!」

まっすぐ目を見てそう言った


「ぶっっ」と笑うまさ
「確かにお前に悩み相談とか頼りないわー」
「な、なによ人がせっかく!!」


「うそうそ、サンキューな」
目を細めて嬉しそうな顔をする


「でもお前はいつも通りばかやってればいいから。俺はそれでけっこう……元気になる」
「…そう?」
「そーそー」



まさがつまみの袋をバリッと開ける

「ホーラ今日のつまみはわさび柿ピーですよー」
「あたしわさびダメって言ってるじゃん」
「じゃ自分で買ってきなさい」
「も〜〜!」

目の前に、いつも通り笑顔のまさがいる


愚痴ばっかり言ってるあたしでも少しは役に立ってるのかな?
そう思うと嬉しくて、少し胸が熱くなった
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