Original

□アプリコットフィズ
1ページ/4ページ

新しい環境を迎えてから
季節はめぐり、4度目の春


「酒井が面倒みてやってくれ」
「はーい!」


初めて、部下というものができた
「私、酒井凛。よろしくね!」
「…よろしくお願いします」
「…………」
「…………」


3こ下、真村亜貴

仕事は覚えが早いし、顔もイケメン…なんだけど



すごく無愛想



私語はしない
いつも眉間にシワがよってる


「ねー真村って高校どこ?」
「…県外だから絶対知りませんよ」
「いやでももしかしたら知ってるかもしれないし?」

ピーー
とFAXの音が割り込む


「…そんな話してる暇あったら企画書作成しましょう」
「……………」


まーったく、かわいくない!



そんなこんなでなんともいえない仲のまま、三ヶ月が過ぎてしまった


「買い出し行ってきてくれ」
ある日、上司に言われ真村と2人で買い出し


無言で微妙にずれて歩く
私語するの嫌いそうだからな〜
なに話せばいいかわからないよ


「亜貴!?」
すると人懐こそうな男性が真村に話しかけてきた
「そーすけ!!」
いつも険しい目をしてる真村の目が、一瞬輝いたのをあたしは見逃さなかった



「まさか上京組に会うとはなぁほんま奇遇やわ」

うわーめっちゃ関西弁!

「そう…だな」
「東京の人クールすぎやない?俺めっちゃ浮いてんねやけど」
「…普通だよ」

真村がチラと私を見る





「なんやねん、そのしゃべり方!もう東京にかぶれたんか!?」
「…!かぶれてへんわ!!大阪愛強いっちゅーねん!」
「せや!亜貴はそうやよな〜」

へ?真村?


「ほな、またなー今度飲みいこ!」
そう言ってお友達は去って行った


「え…真村って関西人なの?」
「……………」

「あのクールで生意気でシティーボーイ風な真村が?」

「…生意気は余計です」

です、のイントネーションが関西弁


「うわー!!ほんとだ!!!」


「なんで隠してたの?」

「…関西人って陽気なイメージあるやないですか?俺…人見知りやし」

「…………」
真村の耳が心なしか紅い


「ぶ、ぶひゃひゃひゃ」
あたしは笑いをこらえきれず、大爆笑してしまう

「!!だからばれたくなかったんですよ」

「え!?いやいや!関西弁すごくいいじゃない!てか真村が人見知りなんて〜意外!!」
「……」

「大阪愛強いんだって〜かわいい〜」あたしは涙目になりながら笑った
「先輩…怒りますよ?」

「じゃ、あたしのことも嫌い…じゃないんだよね?」
マジメなトーンでそう聞く

「!なんでそないな話なるんですか?」
それを肯定の意ととる


「えへへー飲み行こ!」
その日はちょうど金曜日で、仕事帰りに2人で飲みに行った




色々聞くと、真村は関西人なのがバレてつっこまれたときあたふたするのが嫌で、みんなにだまっていたらしい


「飲みに行ったら無礼講!タメ口でいいわよ。関西弁聴きたいし!」
「変わった人やな」

「まぁ俺先輩尊敬してへんし、タメ口のがしゃべりやすいでええけど」
「相変わらずかわっいくない!いやでもかわいい!」
「なんやねん!」

失礼な言葉も照れ隠しに思えてくる
あたしに色々からかわれてうとましそうでも、どこか楽しそうな真村がいた



「ふへー」
「ちょっと先輩!?」
「あたしすぐ酔っちゃうんだー」
「まだ2杯目やで!」
「お酒弱いんだよねー」
「だったら無理して飲むなや」
「でもー真村と仲良くなれたしーお祝い的なね…うーん」
「………」


嬉しかった
真村と急速に距離が近づいたこと、仲良くなれたこと

目の前のアプリコットフィズのカクテルのグラスを見ながら
ぼんやりとそう思った
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ