天使と悪魔
□君が落ちた日に
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私は病院内をエスカレーターで降りた後、人形が落ちた場所に一番近い出口からスリッパを履いたまま出た。
人形は、小さい木の上に落ちたようだ。少しでも隣にずれていたら、駐車場のコンクリートで木端微塵に粉砕されていただろう。
「大丈夫?」
声をかけてみる。普通、人形は話せないけれど。
「大丈夫よ」
本人がそう言うなら、そうなのだろう。
「彼処で何してたの?」
「めぐを待ってたのよ」
「めぐちゃんを?」
この娘はめぐちゃんの人形さんなんだ。
「…めぐちゃんの部屋に運んであげようか?」
だって、自分で立ち上がれないほど、身体が傷んでいる様なので。
「……………」
何も話さないので、肯定と捉えて人形を起こす。
「待って。めぐの部屋じゃなくて、あそこへ」
「…旧礼拝堂?」
私は人形をお姫様抱っこして、人形が指差した旧礼拝堂へと連れて行った。