+小説弐+

□―死の神―
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一・現れる。

「遅刻だーっ!もう駄目!」
俺は走って家を飛び出した。
(あーあー、よく漫画に出てくる駄目駄目主人公と一緒だよ。)
俺は空を眺めながら嘆いた。空は暢気な程青い。俺は其の下を必死こいて走っている。
(もうすぐ学校だ…良かった。間に合う!あの人は…豪風和樹…遅刻者には死ぬ程の罰を与えるという…ってヤバい!チャイムが鳴りそう!走れ!俺!)
俺は猛ダッシュで校門をくぐった其の瞬間
キーンコーンカーンコーン…
(よっし!やったぞ俺!)
そう思った時背筋がひやりとした。すっと振り向けば豪風がほんの一瞬、でも長いこと俺を睨んでいた気がする。

俺にとって学校は自分の恥を曝す所。友達もいないしモテないし勉強出来ないし運動音痴。最低な男だ。
「水無月侑、また補習だ。分かったか?」
「はい…」
(あーまた補習か…俺だけかよ…)
「今日の放課後だからな。今日は特別な先生が来るからぞ」
(別に来なくて良いよぉ…)
俺は溜め息をついた。俺の背後からも前からもクスクスと笑う声が聞こえる。本当に恥ずかしい。斎さんにも笑われる。斎さんは学校一の美人の子。無邪気で可愛らしい。斎さんを好きな人は多い。たから俺がとどく相手じゃない。

やっぱり俺は駄目人間。

放課後、俺は指定された時間と場所に行った。

「君かい?誰も引っ掛かる筈の無い補習に引っ掛かり来た駄目人間は」
「誰だよ、お前…」其の場所にいたのは小学生くらいの美少年。意地悪そうにも見える。
「駄目人間で無いようにさせてやろうか?」
其の子は言う。そりゃ駄目人間で無くなるなら嬉しい。
「本当か?」
「ああ、本当だぞ」
「っていうかお前誰だよ!」
「僕は時雨」
「そうか…俺は…」
「知ってるぞ。水無月侑」
「気味悪いから!で、本当の本当に君が駄目人間じゃなくしてくれるのか?」
「勿論だ。これを指に嵌めろ」
俺に差し出されたのは黒い指輪。
「これして何になるんだよ?」
「駄目人間じゃなくなる」
「…」
俺は恐る恐る指輪を人差し指に嵌めた。

ドクン

何が起こったのだろうか?一瞬寒気がして鳥肌が立った。
「契約成立。駄目人間脱出。君はこれから死神になる」
「…はぁ!?」
(嘘だろ!んな冗談…って俺脈打ってない…俺死んだのか?死神ってぇ!?」

「嘘だろー!!」
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