天下繚乱

□夢をみた 後編
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──好きに使えと連れて来られた、だだっ広いセフィロスの部屋。

その慣れない広さに唖然とするも、当の本人はそんなあたしを知る由もなく…社に戻ると短く言い残すと、あたし一人残してさっさと出て行ってしまった。

いきなり放置されたあたしは、何をどう“好きに使って”良いか分からず、その無駄に広いリビングで一人放心していると、カーテンの隙間から陽の光が射し込んでいるのに気が付いた。

漸く我に返ったあたしは、昨夜の喧騒で自分が酷く汚れている事を思い出し、とりあえずパリパリに固まったこの髪を洗い流そうと部屋を出た。

向かった先は…これまた広いバスルーム。
あたしは贅沢にも、たっぷりのお湯でそれを洗い流すと、適当にあったバスタオルにくるまった。
当然着替えなんて持って無かったので、そのままの格好でリビングへ戻ると、落ちつかない広い空間を避け、光の射し込む大きな窓とカーテンに近い、その部屋の隅に踞り、いつもの様に身体を縮ませ、猫みたいに丸くなって眠りについた──














──どれ位眠っていたのだろう…身体の沈む、その慣れない感覚で眼を覚ますと、あたしはふかふかの白いベッドで、上半身裸のセフィロスの腕の中に収まっていた。

咄嗟、慌てて身体を退くが、不意に聞こえた優しい声に、あたしの鼓動が跳ねた。

「…どうした…眠れないのか?」

知らずと震える身体。セフィロスは二人の隙間を埋める様、そっと腰を引き寄せると、その身体にシーツを被せてくれた。

「…寒かったか?」

昨夜のセフィロスからは、想像もつかない優しい言葉。
大きく首を振って違うと訴える。
…あたしの身体が震えるのは、そんな理由なんかじゃない。

「……ごめんなさい…」
「…何故謝る」

「……だって…起こしちゃったから…」


「…気にするな」

セフィロスは、尚も震え続けるあたしの髪を空いた手で軽く鋤くと、ため息と共に小さく言葉を洩らした。

「…俺が怖いか?」
「………そう…じゃない…」


「では、何故震えている?」

あたしはその問いに答えられず口を閉ざすと、露となった自らの肢体をきつく抱き締めた。
そのあたしの仕草で悟ったのか、セフィロスは小刻みに震えるあたしの肩を抱くとゆっくり口を開いた。

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