Zack
□眠り姫
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「こんな所で寝たら風邪引くって…」
「…ん……ザック、ス?」
午後のトレーニングを終え、一息つこうと向かったリフレッシュルーム。
珍しく静まり返ったそこで、見覚えのある後ろ姿を見つけ声を掛けた。
ソファーの背に頭を凭れ、憔悴した様子のカイ。
重そうな瞼を開けると、消え入りそうなか細い声で俺を呼んだ。
「…ちょっと無理し過ぎなんじゃない?」
「……そう、かも…」
余程辛いのか、ソファーに凭れたまま小さく呟くと、また瞼を閉じた。
「──こんな所で寝るなって…仮眠室、連れて行ってやろうか?」
「…ダメ。起きれなく…なっちゃうもん…」
「──ったく。ほら…」
俺はため息と共にその隣に腰を降ろすと、力無く項垂れるカイの身体を軽く引き寄せた。
「…ん?──うん…」
一瞬、何か言いたそうに此方を見たが、再び襲ったその睡魔には勝てなかったらしい。瞼を閉じると、また夢の世界へと戻って行った。
ったく…こんな所で寝るなんて、お前は無防備過ぎんだよ…。
お前を狙う物好きな男が此処にいるってのに…ホンットそういう所、鈍いよな?
思った所で、当の本人は夢の中。俺はその肩をギュッと引き寄せると、外の景色に眼を走らせた。
穏やかな夕暮れが、辺りを魔晄色に染めていく。
そんなミッドガルを、クリスマスのきらびやかなネオンが照らし、彩り始めていた。