Zack
□Just One's More…
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「なぁ、バレンタインのお返し何がいい?」
「…あのさぁザックス。いったい今、何月だと思ってんのさ」
多忙な毎日に攻め立てられ、会えずにあれから二ヶ月半。
セキュリティの厳しい神羅では許可なく他のフロアへ出入りする事も許されず、中々会う機会がない。
それがタークスとソルジャーともなれば、この結果は必然。
それを熟知している筈のカイからため息が洩れると、ザックスはバツが悪そうに頭を掻いた。
「…仕方ないじゃない。俺任務でミッドガル離れてたんだから」
「でも、皆ホワイトデー前にくれたよ?」
「え?俺にだけじゃなかったの!?」
パチパチと瞬きを繰り返すと、身を乗り出してその顔を窺う。
「…あのね、ザックス?会社で配るチョコなんて挨拶みたいなもんだよ?」
「でも、俺のは本命でしょ?」
「…羨ましいね、そのポジャティブ思考。なんであんたが本命なのさ」
「へ?」
「あんたのも他に違わず義理だっつーの」
「ぎ…義理ぃ!??」
頓狂な声を上げると、オーバー過ぎるリアクション。
カイは使いで持たされた封書を胸元に引き寄せると、情けなく肩を落とす目の前のソルジャーに、本日二度目のため息を溢した。
「ったく…。そんな事よりザックス。あんた他の子にもチョコ貰ったんでしょ?あたしなんかより、その子になんか返してあげなさいよ」
その言葉に首を傾げ、う〜んと唸るザックス。
「それ無理。いっぱい有りすぎて返しきれない」
「へぇ〜意外…。そんなに貰ったんだ?」
「まあね?…あ、ちょっとは見直した?」
「ま、人の心は千差万別って言うからね」
「…今サラッと酷い事言ったろ?」
「そ?気のせいじゃん?」
肩を竦め、涼しげに言い放つカイ。
いつものザックスならそこで唇を尖らせ、拗ねる所なのだが、予想に反してその口元が弧を描くと、思惑を外されたカイの顔が怪訝に曇った。