Zack

□Smile&Smile
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──カシュ


「ん、美味しい!」


不思議な色の林檎
それはバノーラでしか採れないのだと言っていた。

バノーラ・ホワイト
通称『バカリンゴ』


任務でバノーラに行くと言ったら、一度は口にしてみろとアンジールに勧められた。村の入り口から奥へと続く木のアーチ。その枝から下がる紫色の実をじっと見ていたら、物腰柔らかな初老の女性が、一つ分けてくれた。

「私の息子もこの実が大好きで、いつも美味しそうに食べていたのよ。普通の林檎と違って、甘さがちょっと違うでしょ?」
「…そうですね。確かに不思議な味…。あの…、林檎の収穫期って初秋でしたよね?」

手元から視線を外し、道なりに続くアーチを見上げる。それは今が収穫期だというのに実は疎らで、季節外れの花を付けている枝まであった。

林檎の木が季節外れの花を咲かせると(狂い咲きと言うらしいが…)その年に実を付けないらしい。
収穫期に咲くって、どういう事になるんだろ…?

「バノーラホワイトはね。不思議と一年中、実を付けるんですよ」

あぁ成る程。だから花が咲いている枝があるんだ。

「へぇ…変わってますね」

その女性はふふッと小さく笑うと、言葉を続けた。

「ここの実も美味しいけれど、地主さんの所の実はもっと美味しいのよ」
「種類が違うんですか?」

「いいえ。同じよ」
「?」

肥料が違うのかな?
それとも凄く丁寧に育ててるとか?そんなに美味しいのなら、あたしも食べてみたいな。

「でも、そこの息子さんが村を出られてからは、あまり実をつけていないのよ」

「…そうなんですか」
ちぇ、残念。

「実はね、家の息子も食べた事無くてね」
「…地主さん、分けては下さらないんですか?」

「いいえ。息子はそこのお子さんから直接欲しかったみたい。だからね、息子に言ったの。そんなに食べたいならその子に貰えばいいじゃない?ってね。でも息子曰く『プライドがある』ですって。可笑しいでしょ?二人は親友で、幼なじみなのにね」

「“プライド”…ですか」
「そう。それは大きくなった今でも変わらないみたい。二人は競い合う様に神羅のソルジャーになったわ」

…ソルジャー?
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