Reno
□朱
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──月明かりに照らされたその塊に視線を反らせずにいると、背後から声が近づいて来た。
「向こうは片付いたぞ、と」
いつもの調子で近づいて来るその声に、振り返る事も…返事もできなかった。
「…どうした?」
近づくその声と共に、私の視界に鮮やかな朱が入ってきた。
────朱。
微かな月明かりの中、目の前に広がるアスファルトの朱は闇の中に黒く…そしてもう動く事の無いその固まりは、あまりにも小さかった…。
──いくら…任務でも…
何度も自問自答するが、答えは見つからない…。
「カイちゃーん、聞こえてマスカー?」
レノは私の顔を覗き込むと、手をひらひらと振って見せた。
何も言えずにいる私。
レノは腰を上げ、動かぬその物体に視線を落とした。
「…………。」
「………………レノ…。」
絞り出した私の声は…震えてたかも知れない。
レノはゆっくり振り向くと「帰るぞ」と…私の腕を掴んだ、半ば強引に細い路地を引き返す。
──正面にはレノの朱い髪…その天上には細い月が優しい光を灯してた。
月明かりに照らされたレノの朱は、とてもキレイで…
「…気にすんな。」
バイクに股がると、レノは一言そう言い私に後ろに乗る様促した。
必要以上に喋らないレノ。
皮手袋をはめながら私の頬を撫でると、轟音を響かせバイクを出した。
「…ごめん。」
その言葉はエンジン音に掻き消されてしまったけど…
来てくれたのが、レノで良かった…。
───ありがとう…ね。
2007.07.15
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