その他
□夜空
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「何してんだ」
後ろからた聞き慣れた声がした。振り向かずとも誰かわかるので、私は視線を変えずに言う。
『空を見てるの』
「それくらいわかってる。何で雪降ってる中。しかも夜に空見上げてるんだ、って聞いてんだ」
ローは私の隣に立ち、船の縁へともたれる。
『だって、久しぶりだし。もうすぐ着くでしょ、冬島』
私は漸く視線をローへと動かすと、呆れた…というより馬鹿にしたような顔で私を見ていた。
「風邪ひくぞ。…いや、馬鹿は風邪ひかねぇのか」
『誰が馬鹿だって?』
「お前意外に誰がいる?」
いつものようににやり、と笑ったローを見て今度は私が呆れたような顔をしていた、と思う。
『私だって風邪ひくってば』
「10年に1回あるかどうかくらいだろ」
『普通の人と変わらないから!それに風邪ひいたって問題無いでしょ。ロー、医者だし』
「おれは外科医だ」
ああ、そうだったけ。なんて思っていれば、ばさっと頭から何かをかけられた。その何かを取って目で確認する。
「お前が風邪ひくとベポたちがうるせぇ」
とか言いながら私にその何か──…上着をかけてくれたけど、本当にそれだけの意味でかけてくれたの?なんて聞いてみたくなる。でも、以前似たようなことを質問したら怒って右腕を持ってかれたのを思い出し、心の中で思うだけにした。
二人を夜空だけが見ていた
(でも、星空と雪って幻想的じゃない?)(何女みたいなこと言ってやがる)(私は女だって!)