それは全ての

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第二話
ちびうさと話した日
(アニメ61話より)







「…いってきます。」

小さな声で呟いて、普通の学生よりかなり早めに家を出る。
通学には早すぎるこの時間帯は通勤の人もあんまりいなくて歩きやすいんです。

朝の空気をすうっと鼻で吸い込んで口から吐き出すときに大事なことを思いだした。





あ、今日はテスト返却だけだ…





夏休み前の期末テストの返却だけの、言ってしまえば日数稼ぎの日だ。
午前中だけで終わり、だいたいの人が帰りにお昼を友達と食べる恒例行事のような、日だ。
普通に考えて弁当は必要ない、のだが、私は別である。
ギリギリまで図書室で粘り家には最低限の時間しか居たくない自分にとっては弁当は必須アイテムなのだ。



なのに、弁当忘れた。






あー、ミスった。
…取りに帰るか?
いや、めんどい。いろいろ面倒くさくなる気がするからやめよう。ピンク頭とか、ピンク頭とか、ピンク頭とか。


そう。
最近やってきたピンク頭の幼女、自称“うさぎ”はうちの従兄弟、らしい。
なぜ曖昧な表現かと言えば。
うちには従兄弟は居なかったはずだからだ。

昨日、バイト終わって家に帰ってきたらそんなことになってた。


これあれだろ。
姉さん達関連だろ、絶対!ってことで流れに任せてみた。

が。

従兄弟じゃないって分かってるだけに、ぼろが出そうで怖いから最近は本当に最低限しか家に居ないことにしている。
しかも、あの子、よくよく考えてみたらあのとき公園にいた子のような気がするし…



そんなこんなで、家に帰るのはリスクが高すぎるから弁当は諦めよう。うん。




















家に戻るとリスクが高いから、そのまま来たのに。
なのに。
なのに。

なのに、何故…




抜け道に使う公園のブランコにピンク頭が乗っている!?



………いや。
相手は気づいてない。今なら回避できる。よし。回れ右だ。このまま元の道に戻って、何事もなかったかのように帰るんだ。

「…っふ…うえー…」

帰るんだ。

「…っく…うえっ」

かえる、んだ。

「ぐすっ…うえー…」

かえ…

「……まっ…まま…」

………。


はぁ。
………ってかね、泣けばどうにかなるっていう考え方ね、好きじゃないの。むしろ嫌いなの。虫唾がはしるの。幼稚園はそんなガキばっかりだったから、余計に。

でも、思ったことそのまま言うとみんなショックを受けるらしいから(空気を読むことで身につけた)ここは大人の余裕で…





「おーい、……(…あれ、なんて呼べばいいんだ?)…ピンク頭。…鼻水でてんぞ。」

なんて呼べばいいのか分からなくて脳内あだ名で呼んじゃった…けど、いーかな…汗
焦って余計な事まで言っちゃったよ…


「!…うるさいっ」


「泣いてんの?」


「泣いてない!」


「…ふーん。」


「…何よ。」


「ままー、は家に帰れば会えるんじゃん?」


「!!…っうるさい!」


「…はー。これだからガキは…」
なんで声を掛けたんだろうか自分。
めんどくさくなってきた…行こう。
そう思って、公園の出口に足を向けたとき


「…っあんたに私の気持ちなんてわからない!」

っふっはっはー。ガキだからって調子に乗ってんじゃねーぞ。

「イラッ…うん。私はそんなファンシーな髪の色じゃないから、ピンク頭の気持ちはわからん。」

ガキ、と言えばガキじゃないと怒る。
核心を突けば自分だけと悲観ぶる。
だから面倒くさいんだ、子どもなんて…!


「ピンクピンクって…バカにすんなっ!」


「!」
こりゃびっくりだ。そっちを気にするのか。
…けど、バカにした訳じゃあないいんだけどなぁ。まぁ、さっきの言い方じゃあ言い訳出来ないか。



「桜のようで綺麗だったからそうしたんだけど……君はバカにされてると思ってる。」



自称“うさぎ”の幼い少女は胡散臭そうにこっちを向いた。



「ほら、自分の気持ちも人の気持ちも言葉にしないと伝わらないんだよ。言いもしないピンク頭の気持ちなんてわかる訳ないじゃないか。」



「だって…、だって!
言ったって!わかるはずないもん!私の気持ちなんて誰n「…怖いよー。1人は嫌だよー。」


「!?」
びっくりしたように目を見開いたままこっちを見続けている少女に、追い打ちを掛けるように言う。


「誰か助けて。」


「な…何言って…」


「寂しいのはもう嫌だよ。……でしょ?」


「!!」


「ちっさい子の考えることなんてお見通しなんですー。」
ってゆーかね、人の近く…もとい私の近くで悲観ぶるのは止めて頂きたいんですよ。
泣いたって、どうにもならないことなんてこの世にいくらでもあるんだから。

未だ、こっちを凝視してるピンクの頭に向かって初めて目を合わせてしゃべる。

「悲劇のヒロイン気取って泣くのは楽でしょう?泣いてりゃ誰かが助けてくれるもの。けれど、それは自分の周りに必ず助けてくれる“誰か”が必ず居て、自分を必要としてくれる、って自分自身が気づいてないと仕えない手よ。あんたには頼れる人がまだまだ居るってことだ。
知ってんなら、そいつらを上手く使う方法を考えてる方が泣いてるよりも上手な時間の使い方だと思うけど?
最後の最後にどーしてもダメなら、流れに身を任せな。ピンク頭ならどーにかなるから。」






(貴女の周りには沢山いるでしょ?)
(貴方自身が気づけたのなら、あとは周りに頼りなさい)
(どうしてもダメなら目も耳も心も閉ざして流れに身を任しちゃえ)


…似てる。
ママに、似てる。もううろ覚えでしか思い出せない記憶のママに…





「…ぃ、おい、聞いてんの?」


「!…う、うん。」


「ほら、家に帰れよ。心配してんd「あー!!ちびうさ!!あおいちゃん!!」げ。」

あーほら、来ちゃったじゃん!ブッキングしたくなかったから帰れって言ってたのに!!

「あおいちゃんと一緒に居たの!?もー!心配したんだからねーっ!!」


「え、やっ…ちが」


「なんだ。あおいが連れ出してのか。」


姉さんの後から小走りで駆けていた男がいたのはちらっと見えてたが…
問いたい。

「…なんでお前もここに居んの?ねぇ、なんで?」

「うさこと途中で会ってな。ちびうさが居なくなったって走り回ってたから。」


そんな大事になってたなんて…
だいたいガキが朝の7時前に出歩くからこんなことになるんだよ!

「ちびうさも見つかったし、うちに戻ろう!」

「え、あ、じゃぁ私はー…」ぐいっ

「ほら、行くぞあおい!」

私は学校行く途中だったんだよ!
見つかったんならいいじゃん、私いらないじゃん!!






ってか…
腕を放せ、地場衛ーっ!!!!!







結局、4人で家に戻ることになりました。
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