それは全ての

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ピーヒョロピーヒョロ
笛の音色と
ドンドンドンドン
太鼓の鼓動
カラコロなるのは下駄の音


甘い匂いと香ばしそうな音!
どこもかしこも笑顔な人混み!
ビバ、夏祭りー!!

「さっちょーん!ごめん、待たせた!」
「本当だよ、綿あめ奢って。」

ごめんよ、さっちょーん!
なんだか朝から調子が悪いんだよね。いや、調子はいんだけど。なんだろ…。お祭り行きたくないってゆーか、行っちゃいけない的な。いや、さっちょんと行きたくなかった訳じゃないんだよ?ただ、なんとなくダラダラしてたら時間なくなっちゃったといいますか…。


「あおい、早くお支払い!」
さっちょん、買うの早いよ!




「その着物好きなんだねぇ。去年も着てたもんね!」
「えー?誰と間違えてんのー?これ卸したばっかりだよ?」

ありー?
さっちょんがこの着物を着てるの、前にも見たんだけどなぁ…。間違えた、のか?

「おー、さちとあおいじゃん!久しぶりー!!」
「あー、りゅー君とまーぼ!久しぶり―!」

声をかけてきたのは同級生の男子。
をいをい。お目当てはさっちょんだって知ってるんだぞー。前も偶然を装ってたもんねー!

「2年目も同じ手段とは、流石にばれるだろーよ君たち。」
「は?」
「何言ってんのあおい?去年は会ってねーだろ。」

…は?
いやいや何言ってんの君たち。だって前もお祭りで会って…

「なんかねー、今日あおいおかしいのー。この浴衣も見たことあるってゆーし。」
「さちは浴衣毎年違うもんなー。」
「つーか、去年はお前風邪で来なかっただろ。」




…っは!!確かに!!
そーだよ、去年は行ってないんだよ。随分デジャブ感あるけど。このメンバーでお祭りは初めてなんだよ。デジャブ感半端ないけど!
なーんーでーだーっ?
いや、でも確かにこの4人でお祭り回ったことあるような…
確か最初にチョコバナナ食べて



「ねー!チョコバナナ食べよーよ!」



焼きそば食べて



「あ、俺焼きそば食いたい。」
「私もー!」



射的したけど誰も当たらなくて



「あー!射的やろーぜ!」
「おー、いいじゃん。」
「##name1#、やろ、やろ。」
「………あれ?」



「…誰も当たんなかったね。」
「…ねー。」
「ちくしょー!」
「……あるぇ?」


おかしい。いやいやいや、どんだけデジャブ!?むしろ予知だよこれ。こえーよ、自分が!だってこれ最後に花火みて4人で帰んだぞ!途中で居なくなったさちとまーぼが「付き合うことになりましたっ!てへ」って言って合流すんだぞ!?

「つーか、花火始まるっつーのにさちとまーぼどこ行ったんだよ。」


ま じ か !

をいー。なんで?どうした自分。マジでこえーよ。なんなん?なんn「ち。携帯出ねーし。おいあおい、俺ちょっと探して来るから。」


「…ちょっと待とうか。」
「あ?なんだよ。花火始まっちまうだろ?」
「りゅー、頭いいけどあれだよね。ちょっとあれだよね。」

ほんと、こいつあれだよね!
あたしもあんまり読めないけど、こいつに限っては空気を読むという言葉自体しらないよね。
つーか、まーぼめっちゃわかりやすいじゃん!気づこうよ!仮にも友達だろー!





結局、りゅーの相手してじっくり花火見れなかった。花火が終わった後電話がかかってきて駅前で合流。

「付き合うことになりました!てへ」

ほらな!言ったじゃん!言ったじゃん!いや、言ってはないけれども!

「はー!マジかよ、まーぼ!やったじゃん!っつーか好きだったのか、さちんこと。」

「へへっ!」

うるせーよ。マジで。なんだこいつら。あー疲れた。

「ふふっ」

…まぁ、さっちょんが笑ってんならいっか。
しかし花火が終わったからってみんな一気に帰りすぎでしょー、これ。

「つーか、あおい。このこと気づいてたな!」

「何ーっ!?え、ちょマジで?」

「…え、何?気づかない人いんの?」


ホームに人居すぎで危ないんじゃないかなぁ。


「マジかー…。…うわ、何かハズ…」

「まーぼ、大丈夫!」


…あれ?この景色見たことある、ような。


「!さちっ…!」

「だって、クラスのほとんどは知ってるから」


ここ、じゃなくて。


「!?のおおおおおおお!!!!」


もうちょい下。


「ぶははははっ!マジで!?最高なんだけど!」

「うん。ねーあおい?」


あと半分くらい下から3人のこと見てたような。


「あおい?」

「!……うん。告るの遅すぎてみんな苛々してた。」

「ぎゃははははっ!はー、面白っ!!…!あおい、あぶなっ」


3人がこっちを見ててー…ドンッ!!!!









「……え?」










あれ…、身体が浮いてる。
みんながこっちを向いてて。
あ、もうちょい。もうちょい下。
あぁ、このアングルだ。
そうか。ここから3人を見たんだ。

思い出した。

 夏祭りの帰りに。

  ホームから落ちて。

   電車も来てて。

    3人がこっちを向いてて。

   さっちょんが、りゅーが、まーぼが。

  手を伸ばしてくれて。

 そして。




        そして。




















死んでしまったんだね。

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