小説(リボーン)短編

□一目惚れ
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放課後。
 
いつも通り、沢田綱吉がうるさいガキ達と群れていた。
どうやら彼を迎えに校門前で待っていたらしい。
いくら敷地外だからといっても校門前。風紀が乱れては困る。たとえ下校する者が少ないこの時間帯でも。
なので帰りかけた彼らを引きとめようと声をかけようとした。
その時―――
 
 
ボンッ
 
 
いきなり目の前で煙がたちこめた。
 
「っっ?!」
 
そこには先程までのガキ2人はいなく、代わりに10代半ばの少年少女が立っていた。
1人は何だか服装からしてだらしがない黒髪の男。
もう1人は・・・―――
 
 
「・・・・・・」
 
 
何アレ何アレ何アレ。
変な少年(青年?)はおいといて、何あの少女。
三つ編みに短い前髪。派手過ぎない服。
正直こんなこと初めて思った。
―――可愛い。
こんな単語、一生使わないと思ってた。
今までだって使った事なんてなかった。
・・・でも、他に形容しようがなかった。
 
 
 
その時、変なチンピラが彼らに絡んできた。
武器も持っている。
ダメツナと呼ばれる彼はもちろん、あとは見るからに頼りなさそうな少年にごく普通の少女。
しょうがない、学校周辺で騒がれては迷惑だし、ここは僕が行くしかないかと思ったその時―――
 
 
 
 
「沢田さんっ、ランボッ、下がってて!!」
 
少女がそう叫んだかと思うと、さっきまでのチンピラどもが地面に山積みになっていた。
 
そのわずか一瞬の間、少女が華麗に舞うのを見た。
 
 
「・・・・・・・・・」
 
 
綺麗だった。
無駄な動き1つなく、軽々と宙を舞い、ものすごい速さで攻撃を繰り広げていた。
ここまで綺麗に戦う者を、今まで見た事がなかった。
戦ってみたい・・・というよりは、彼女が舞っているのをもっと見ていたかった。
 
 
 
 
「イーピン、ありがとう!!」
 
「一瞬でしたね」
 
沢田と少年がそう言っているのが聞こえた。
 
 
――――イーピン。それがあの少女の名前か。中国人なのか?
 
 
「・・・・・・ん?」
 
 
何故自分は他人なんかの名前を気にしているのだろう。
 
―――と・・・
 
 
―――ボンッ
 
 
「っ??!!」
 
また先程と同じように煙がたちこめた。
そして煙が晴れたと思ったら、またチビ2人が沢田の周りに群れていた。
さっきまでの少年少女はいない。
 
 
「・・・・・・?」
 
何なんだ。よくわからない。
―――まぁいい。後で沢田に問い詰めれば済む事だ。
 
 
 
 
彼らが帰っていく。
騒ぎを起こした事を咎めようとしたが、今日のところは見逃してやろう。
何故だか気分は悪くない。
 
―――と
 
 
「こらっ、ランボ、イーピン、引っ張るなって!!」
 
 
 
・・・・・・はいぃ??!!
 
 
“イーピン”??!!
 
待て待て、さっきの少女がイーピンという名ではないのか?!
・・・・・・まぁ、それも後で彼に問い詰めればいい話だが。
 
 
 
 
何だか、先程の少女の残像が頭から離れない。
こんな事初めてだ。
どうしたんだ、今日の僕は。
らしくない。
だが、不快ではない。
いつもだったら群れているだけで速攻咬み殺すのに、今はそんな気にならなかった。
 
 
結局何も出来ずに彼らを見送ってしまった。
 
 
 
 
 
 
→後書き
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