小説(リボーン)連載
□文化祭U
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文化祭当日。
――とうとうこの日が来た。
もう逃げ回ることはやめた。
無駄だとわかっているから。
ツナは静かにぐっと拳を握る。
その手には白い手袋が。
そして、いつも寝癖で爆発している髪はきちんと落ち着けられ、さらに腰のあたりまでのウィッグをつけられていた。
もちろん服はフリフリがこれでもかというくらいつけられ、さらに今時の女子高生並に短いスカートだった。
ガーターベルトも忘れていない。
…何故にたかが中学の文化祭でここまでしなくてはならないのか。
某電機街のメイド喫茶顔負けである。
「………何コレ………」
ツナは自分の今の格好が鏡に映し出されているのを見て思わずそう呟いた。
ちらっと横を見る。
同じくメイドの格好をした笹川京子や数人の女子がいた。
明らかに彼女らの方が似合っている。
だがクラスの者達の反応は違っていた。
本人に言うと嫌がるから口には出さないが、今のツナはどこからどう見ても完璧な美少女であった。
男性客が増えるのは間違いなしだ。
さらに獄寺や山本がこれまた今流行りの執事の格好をビシッときめているので、女性客も大勢引き込めるだろう。
もう一般客が来る時間だ。
ツナが着替えたのは結局ギリギリだった。
「…って、あれ?山本、獄寺君は?」
セットの最終確認をしていた山本に尋ねる。
どうも、さっきから獄寺の姿が見えないのだ。
もうすぐ開店だというのに。
「あぁ獄寺か。トイレだ」
「ずいぶん長くない?もう始まっちゃうよ。獄寺君が客ひきの頼りなのに…」
すると山本は少し言いにくそうに頭をかく。
「あ〜…止まらねーんじゃね?血が」
「ち……血ぃ??!!」
またどこぞの不良と一戦交えてきたのか?!
ツナの焦りを感じとった山本は違う違うと笑う。
「鼻血だよ鼻血。ツナのメイド姿見たとたん鼻押さえてトイレに駆け込んでったぜ」
ほらこれ血の跡〜もう困るよな床汚して〜などと軽く言われた。
「あ……そう…」
彼の奇行は今に始まったことではないので気にしない。
とりあえず無事なら放っておいていいだろう。
仕事は戻って来た時に倍働いてもらうとして。
問題は自分だ。
こんな姿……なるべく知り合いに会わない事を祈るしかなかった。
そしてこの時のツナは、獄寺だけでなくあと数人、クラスの男子がいない事に気づかなかった。
もちろん、その数人も獄寺と同様トイレで鼻血と戦っていた。