小説(リボーン)連載

□お泊まりU
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2日目もつつがなく過ぎた。
 
山本とスクアーロの寝る部屋が違うと知って、少し安心したツナ。
 
逆に獄寺はつまらなさそうな顔をしていた。
差詰め、自分と同じ痛みをおまえも味わってみろというところだろう。
 
 
 
そんなこんなで、あっという間に3日目の夜が来た。
 
昨日の朝からずっと仕事で出かけていたスクアーロも、夕方には帰ってきていた。
 
2人で一緒に夕飯を食べ、並んで部屋に向かう。
 
今日の夕飯もイタリアンだった。
だが家ではほとんど和食の山本にとっては、珍しいし滅多に食べられない為とても楽しく食べられた。
 
 
 
一方、スクアーロはかなり迷っていた。
今日が最終日。
明日には武は帰ってしまう。
彼の家は父親がいるため、こちらが泊まりに行ったところで何も出来ない。
だが今夜ならば……。
 
いくらヘタレと言われようとスクアーロも男。
好きな人と繋がりたいと思うのは当たり前で。
 
キスまでは進んでいる。
だがそこから先がなかなか踏みきれない。
まだ中学生という事もあるかもしれない。
だがそれ以上に、武を大切にしたい。
それに、辛いのはされる方だ。
 
今まで愛人はいた。
仕事上の体だけの関係。
マフィアの愛人になろうなんて奴はそれなりに覚悟もあるらしく、乱暴にやっても文句は言わない…むしろそれがいいなんて奴までいた。
 
だが武は違う。
体はもちろん、心も欲しい、そしてあげたいと思った初めての相手。
もし嫌われたら、そう思うとものすごく怖かった。
 
大剣豪を倒した男が何を、と言われるかもしれない。
左手を切り落とした時だって恐怖はなかった。
それ以上に闘える喜びが強かったからだ。
 
だが、武に嫌われたら…離れてしまったら………。
 
怖い。
ものすごく怖い。
それでも、体まで愛したい。
全てを愛したい。
 
 
 
 
 
部屋の別れる所までくると、意を決したようにスクアーロが山本に向き直った。
 
 
「武」
 
「ん?」
 
 
向けられた顔は、とても純粋なものに見えた。
その顔を、体を、今夜自分が汚すかもしれないのだ。
 
 
「寝る前、俺の部屋に来い。場所はわかるなぁ?」
 
「うん…?」
 
スクアーロの雰囲気がいつもと少し違う事に気づいた山本は、不思議に思いながらも頷いた。
 
それを確認すると、「待ってる」と言い残し、行ってしまった。
 
首を傾げながらも、山本も自分の部屋へ向かう。
 
 
そして風呂…というかシャワーを浴び、歯磨きをし、荷物をまとめ、布団を整えた。
 
それからスクアーロの部屋へ向かう。
 
今は10月だが、シャワーを浴びたばかりでまだ体が温かかったので、タンクトップに薄い短パンだ。
 
 
 
ここは広いくせ、人がほとんどいない。
コックや使用人も、2階以上の部屋、特にヴァリアー幹部の部屋がある3階には近づかなかった。
なのでこんな恰好で出歩いてても何の問題もないのだ。
たまにベルやマーモンに会うくらいだ。
レヴィとか言う奴は長期で出張中。
オカマのルッスーリアは、夜更かしは美容の大敵とか言って寝るのが早く起きるのも早い。
ザンザスは、いるようだが何故かまだ会っていない。
スクアーロ曰く、超直感で人がいないのを察してから部屋を出るらしい。
不思議なものだ。
 
 
 
と、前方にベルとマーモンが見えた。
 
「あれ?どしたの」
 
ベルがマーモンを抱き上げていた。
 
「もう寝る時間じゃない?」
 
きっと誰より早く寝なければならないのは赤ん坊のマーモンだと思う。
 
 
「あー、いや、スクアーロに呼び出されてさ〜」
 
 
「「………………」」
 
 
すると2人が顔を見合わせる。
 
「まさか……」
 
「間違いないね」
 
そう言って頷き合う。
 
そしてベルは肩をポンと叩きながら「ま、頑張れば」と言い、マーモンはすっかり慣れた「おやすみ」を言い、行ってしまった。
 
 
 
「昨日はツナと獄寺が少しおかしかったし、さっきのスクアーロも様子違った…んで今の2人も意味不明だし…」
 
一体何なんだと、少し不安になる山本だった。
 
 
 

 
 
 
―――コンコン
 
ノックの音のすぐ後に「スクアーロ?来たけど…」と山本の声が聞こえてきた。
 
「入れぇ」と促す。
 
入ると、スクアーロがベッドに腰かけていた。
こちらも薄着で、タンクトップに長ズボンといった恰好だった。
洗い立ての長い銀髪は綺麗に乾かされていて、それがむき出しの肩にかかっているのを見て、山本は一瞬胸が高鳴った。
 
 
「武、こっちに来い」
 
「あ、うん」
 
 
今気づいた。
さっきからスクアーロは全て命令形なのだ。
いつもなら「〜〜してくれ」「〜〜いいかぁ?」なのに、部屋に呼んだ時からずっと、命令口調だった。
 
山本はスクアーロの隣に座ると、片足を上げてベッドの上に乗せる。
そうすると真横が向けるのだ。もちろん相手の方を。
スクアーロも同じ様にした。
 
 
 
少しの沈黙の後、スクアーロが口を開いた。
 
 
「武、これから大事な話をする。嫌だと思ったら拒絶してくれて構わない」
 
また同じ様な事を言われた。
とりあえず聞こうと思っていた山本だが、一言だけ口を挟んだ。
 
「それみんなにも言われたのな。一体何なんだ?」
 
するとスクアーロがきょとんとした後、プッと吹き出した。
 
「やっと笑った」
 
「あ"ぁ"?」
 
「スクアーロ、さっきから神妙な顔して、ちょっと怖かったのな」
 
それを聞いて、スクアーロは一気に力が抜けた。
一瞬バツの悪そうな顔をすると、すぐにいつもの彼に戻る。
 
そして話に入った。
 
 
「武…おまえ、俺の事好きか?」
 
唐突なその質問に少し驚いた山本だが、いつもの様に笑って答える。
 
「あぁ、好きだぜ」
 
改めて言うと少し照れるが。
 
「……わかった。それじゃあこれから話す事を真面目に聞いてほしい。何度も言うが、嫌だったらハッキリそう言ってくれて構わない。いや、そうしてくれ」
 
「……うん…わかった」
 
よしと頷くと、スクアーロは本題に入った。
 
 
「武、俺はおまえを抱きたい」
 
 
一瞬きょとんとした山本。
いつも抱きしめられてるのにな〜と思う。
 
それを予想してか、素早くスクアーロが「そうじゃねぇ」と言った。
 
 
「俺はおまえの心も…体も欲しい」
 
それを聞いてやっとわかったのか、山本の顔がこれ以上ないくらい真っ赤になった。
 
「そっ…それって…まさか……」
 
「あぁ。武、俺はおまえとセックスしたい」
 
そう言って、スクアーロは身を乗り出して山本に触れるだけのキスをした。
 
「嫌だったら抵抗しろぉ。俺はそろそろ、我慢出来そうにない」
 
そしてそのまま山本の両肩を掴んでベッドに押し倒す。
未だに状況が整理し終わっていない山本。
とにかく今1番の疑問をぶつけてみた。
 
 
「スクアーロっ、俺男だぜ?その…出来るのか…?」
 
それも予想の範囲内だったのか、スクアーロは躊躇せずに「出来る」と言い切った。
 
そして再び確認をする。
 
「本当にいいのかぁ?今だったらまだ……」
 
そこでスクアーロの言葉が途切れた。
山本が自分の顔を掴んで引き寄せ、互いの唇をくっつけていたからだ。
 
 
「んっ……た、武?!」
 
いつも彼からしてくる事はほとんどないので驚くスクアーロ。
見ると、山本は赤くなりながらもキッとこちらを睨んでいた。
 
「しつけーぞスクアーロ。おっ俺だって好きなんだから、拒絶とかする訳ねーだろっ…」
 
その台詞に、プツンとスクアーロの中で何かが切れた。

 
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