小説(リボーン)短編

□電話
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リング争奪戦後。
 
ヴァリアーには処分が下された。
自分の怪我もそこそこに、ツナは彼らの様子をリボーンに聞いた。
どうやら、しばらくは謹慎処分・・・というかボンゴレ本部で軟禁状態らしい。
皆それぞれに結構な大怪我をしていた。
特にザンザス。
 
ツナは心配でたまらなかった。
いくら本気で闘ったとはいえ、酷い事をしたとはいえ、それは全て彼が悪いわけではない。
生まれながらにトップになる事を決められた男。
ボンゴレ10代目になる事が全てだった男。
それをいきなり、あんな形で裏切られたのだ。
怒るのも当然である。
 
 
 
そんな時、イタリア出張から帰って来たばかりのリボーンが携帯を買ってきてツナに渡した。
それにはすでに1件だけ番号が登録されていた。
 
かけてみろと言われたから、とりあえずかけてみた。
 
 
 
―――プルルルル
 
 
――プッ
 
 
どうやら繋がったらしい・・・が、向こうからは何の反応もない。
 
 
 
「あのぉ・・・もしもし・・・・・・」
 
 
 
『何の用だ』
 
 
 
「っっ???!!!」
 
 
 
――ガチャ
 
 
 
思わず切ってしまった。
 
 
 
 
「ちょっ・・・リボーン?!何コレ?!何だか1番聞きたくて聞きたくない声がしたような気がしたんだけど?!」
 
「何だ、もっと喜ぶかと思ったぞ」
 
「いや、確かに心配だとか気になるだとかは言ったけどっ、・・・やっぱりあの人?!」
 
 
そう、その声は・・・・・・
 
 
 
―――ピロピロピロ
 
「っ??!!」
 
鳴ったのはツナの携帯だった。
このまま放っておく訳にもいかず、通話ボタンを押す。
 
 
 
「・・・もしもし・・・」
 
『いきなりかけてきていきなり切るとはいい度胸じゃねーか』
 
 
やっぱり、聞き間違いなどではない。
 
この声は・・・・・・
 
 
 
「どうしてあなたが・・・ザンザス・・・さん」
 
 
ある意味1番気になっていたザンザスだった。
 
問い詰めようとリボーンを捜すが、すでに部屋にはいなかった。
 
 
携帯の向こうからは、呆れたようなため息が聞こえた。
 
 
『テメェが頼んだって聞いたぞ。違うのか』
 
 
俺が?!頼んだ?!
いや、確かにリボーンにザンザス達の様子尋ねたりしたけど。
たぶん本人に直接聞くのが1番手っ取り早いんだろうけど。
けどさぁ・・・・・・何この状況。
 
 
 
 
『おい』
 
 
返事がないのにイラついたのか、ザンザスの声が少し不機嫌になる。
 
 
「はははいっ」
 
相手には見えないはずなのに、思わずその場できをつけをする。
 
 
『用がないなら切るぞ』
 
「いいいえっ、その、俺もちょっといきなりの事でビックリしてまして・・・」
 
『アルコバレーノか』
 
「まぁ・・・十中八苦そうですね・・・」
 
『なら切るぞ』
 
「ちょっちょっと待ってくださいっ」
 
『あぁ?』
 
怖いのに、何故か引き止めた。
それに、聞きたい事は山ほどあった。
 
 
「怪我っ、怪我はもう大丈夫なんですか?」
 
『・・・あぁ。謹慎処分中だからする事もなくて怪我は早く治った』
 
「よかった・・・・・・」
 
ほっとして思わず本音が出た。
 
 
『用件はそれだけか』
 
「えと、じゃあもう1つだけ」
 
『・・・何だ』
 
 
 
「また電話してもいいですか?」
 
 
 
あれ?反応がない。
 
ツナは、自分は何かマズイ事でも言ってしまったかと不安になる。
 
 
 
だが、電話の向こうではザンザスが受話器を握ったまま固まっていた。
 
本気で殺そうとまでした相手に怪我を心配されただけでなく、また電話をしたいと言われた。
まだ怖がっているようだが、嫌われてはいないようだ。
 
そこでふと、疑問に思う。
何故そんな事を気にしているのだろう。
自分が誰に嫌われようと知った事ではない。
 
 
 
 
 
「あのぉ〜・・・ザンザス・・・さん」
 
 
あまりにも沈黙が続いたため、ツナは呼びかけてみる。
 
それにハッと我に返るザンザス。
先程までの己の考えを打ち消す。
 
 
 
『何だ』
 
「いや、あの・・・もしかして電話とかマズイんですか・・・?」
 
そこでようやく、「電話してもいいですか?」と聞かれたのを思い出す。
 
 
『・・・別に構わない』
 
「本当ですか?!」
 
 
ツナには、まだまだ聞きたい事が山ほどあった。
ヴァリアーの他のメンバーの事、彼らのこれからの事、そして過去の事・・・。
それらを知りたかった。
 
彼の憎しみは、自分が体に受けてよく知っている。
これ以上ないくらいの憎しみ、怒り、覚悟。
闘っていて切なくなるくらい、ひしひしと伝わってきた。
彼が抱えている暗闇を知りたかった。
 
そこから救い出そうなんて大それた事は言わない。
 
ただ、知りたかった。
 
 
 
 
『どうせやる事もないしな、暇つぶしくらいにはなんだろ』
 
 
思っていたよりいい人なのかもしれない。
ただ、それを表に出そうとはしないようだけれど。
 
 
 
「ありがとうございます、ザンザスさんっ」
 
『それやめろ』
 
「へ?」
 
『ザンザスでいい』
 
「はっ、はい!!」
 
『あと、敬語もやめろ。鬱陶しい』
 
「はいっ」
 
『・・・・・・まぁいい』
 
その言葉で、まだ敬語を使っていた自分に気づくツナ。
それから慌てて「うんっ」と言い直す。
 
すると向こうから「ブハッ」と噴き出すのが聞こえた。
 
 
 
『退屈しなくて済みそうだ』
 
 
「は・・・はい・・・?」
 
 
 
とりあえずは普通に電話出来そうだと、ツナは胸を撫で下ろした。
 
 
 
 
そして、これが自分の運命を変える電話だったという事は、この時の彼には想像もつかなかった。
 
 
 
 
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