小説(リボーン)連載

□文化祭(番外編)U
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――と、前からセーラー服を着た男子生徒が。
はっきり言って似合っていない。
まぁ、ああいうのはウケ狙いのようなものだから別に構わないのだが。
 
ちらっと後ろを見れば、ディーノがその男子生徒をくいいるように見ていた。
 
――嫌な予感。
 
 
「なぁなぁなぁ恭弥!!あれ男だろ?!スカートはいてたぞ!!」
 
…やっぱり。
 
「今日は祭みたいなもんだから、みんな好き勝手やってんだよ」
 
雲雀的には、それで盛り上がって売り上げが伸びてくれればそれに越したことはない。
こっちを期待の目で見てくるディーノ。
何故だろう、次の台詞が容易に想像できた。
 
 
「恭弥もあれ着―…ガハッ」
 
「ん?何か言ったかい?」
 
見事に雲雀のトンファーはディーノの腹へ。
廊下に蹲っているディーノを置いて雲雀は見回りを再開した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「きょ〜や〜!!」
 
今、何か幻聴が聴こえた。
 
 
見回りを再開してから1時間。
ディーノはあれからついてこなかった。
あのまま帰ってほしかった。
余計な事を考える前に。
 
 
「恭弥ってば!!」
 
がしっと腕を掴まれる。
――本物。
 
 
「何?」
 
「これ着てくれ!!」
 
嬉しそうなディーノの手には女ものの着物が。
 
「ワオ、面白い冗談だね」
 
「いや、マジだって」
 
…こいつに遠回りな言い方は通用しないらしい。
 
「さっき売ってたんだよっ」
 
たぶんフリーマーケットだろう。
 
「黒髪色白美人の恋人にはどれが似合うか聞いてみたら、これがいいって言われたっ」
 
たぶんそれを勧めた人物は、これを着るのが男だとは思ってもいないのだろう。
紫ベースで白が少し入ったその着物は、確かに綺麗だった。
だからといって着る着ないは別問題だが。
 
 
「着ないよ」
 
「なんで?!」
 
そんな勢いよく返さなくても…。
 
「だって女ものじゃない。似合わないし歩きにくそうだし周りは僕のこと知ってる人ばっかりだし」
 
「大丈夫!!恭弥なら絶対似合うって!!」
 
……女ものが似合っても嬉しくない。
 
 
 
「…とにかく、買ってしまったものは仕方ないから、沢山いる愛人にでもあげなよ」
 
「俺愛人いねーもん」
 
「マフィアのボスなのに?」
 
ボスと言えば女の人を周りに何人も連れているイメージがある。
こいつは愛人もいないのか?
 
「昔はいたな〜20人位」
 
「20人?!……最低…」
 
いくらなんでも2桁だとは…。
 
「でもでもっ、今はいねーって」
 
「何で別れたの」
 
 
「恭弥に会ったから」
 
 
「………」
 
 
このイタリア人は……。
こーゆー事を恥ずかしげもなく言ってくる。
しかし、20人いた愛人全員ふるとは…。
 
 
「馬鹿じゃないの貴方」
 
「うん、俺恭弥バカだもん」
 
「………」
 
はぁ〜とため息をつく雲雀。
 
 
 
そこでディーノが「そうだっ」と何かを思いついたように顔を上げた。
 
「もし恭弥がこれ着てくれたら、本気で戦ってやるよ」
 
「っ!!………それホント?」
 
「ホントホント」
 
「…………」
 
よし、つられてる!!
ディーノは心の中でガッツポーズを作る。
雲雀の戦闘マニアぶりは彼が1番よく知っていた。
 
 
 
 
 
「…………わかった」
 
観念したように雲雀がそう呟く。
 
「マジで?!」
 
ちょっとした賭けだったが大成功だ。
 
 
「ほら、さっさと済ますよ」
 
「あ、それで校内歩くっつー条件付きな」
 
「はぁ?!やだよ」
 
「戦い……」
 
「………わかったよっ」
 
ぶっきらぼうにそう言って、雲雀は空いている教室に入っていった。
 
 
そこはちょうど衣装部屋で、都合のいいことにウィッグから化粧品から全て完璧に揃っていた。
 
「どうせならばっちりやろーぜ」
 
「ただ着るだけでしょ」
 
「いや、桂と化粧も。その方が恭弥だってバレねーかもしんねーぜ?」
 
…確かにそうかもしれない。
素顔で女ものを着るよりは多少化粧をした方が違和感がなさそうだ。
あとはウィッグで顔を隠せばなんとかバレないだろう。
 
「俺やってやるから着替えてこいよ」
 
 
――覚悟を決めるしかなかった。
 
全てはこの男と本気で戦う為。
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