小説(リボーン)連載
□祭〜恋人判断基準〜
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・・・何でこんな事になっちゃったんだろう・・・。
そうだ。事の始まりは母さんのあの一言だった。
だって、それがなければ俺はこんなものを着ることも、ましてやこんな所に来る事もなかったのだから。
「ツッ君、浴衣着てみない?」
そう、これが例の一言。
買い物から帰ってきていきなりこの台詞。
もちろん俺は訳がわからない。
だって、生まれてこの方浴衣なんて着た事がなかったのだから。
もちろん家にもない。
「さっき買っちゃったのよ〜デパートで♪」
「はぁ?!」
「一目見て、絶対ツッ君に似合うと思ったの。見て見てコレv」
「・・・・・・」
それはまぁ・・・いいと思う。
派手すぎず地味でもなく、可愛らしい小さな花がちょこっちょこっとついていて。
・・・・・・ピンクの生地の上に。
「―――っていうかコレ女物じゃんどっからどう見ても!!」
「大丈夫よ〜ちゃんとウイッグも買ってきたから〜♪」
「そういう問題?!」
「何か問題が?」
―――正直言って、母さんのこういうところにはついていけない。
でもまさか女物の浴衣を買ってくるとは・・・。
今まで母さんが起こした珍事件の中でもこれは間違いなくベスト3に入るだろう。
「とりあえず、俺男だから!!母さん、自分の子供の性別わかってる?!」
「やぁね〜そのくらいわかってるわよ〜。でも、たまにはいいじゃない♪」
「何が?!」
「母さん、娘も欲しかったのよ〜。ねっ?今日だけだから。母さんからのお願いv」
・・・お願いって・・・。でも母さんにそう言われると断れないのは何故だろう・・・。
しかも条件をつけてきた。
ずばり、毎回赤点を取るとやらされていた1週間の風呂掃除を、次回はしなくていいというのだ。
これはオイシイ。だって次回も赤点確実だし。
そして、ついにこの破天荒な母の言う事をきく羽目になったのだった。
「きゃあ〜vツッ君可っ愛い〜vv」
「・・・・・・」
正直嬉しくない。
しかし鏡の前に立つと、思わず目をこすってまた見直してしまった。
だって、そこにいたのは―――
「これ・・・・・・俺・・・?」
どっからどう見ても女の子だった。
先程の可愛らしい浴衣に身を包み、髪は一旦ウィッグをつけてから耳の横に少し垂らす以外は上にアップされまとめられている。
しかも母さん、薄いとはいえ化粧まで・・・。
「ツッ君ツッ君、それで今日のお祭行って来なさいよ♪」
「祭?!」
「あら知らないの?今日は並盛祭じゃない。なんだか並盛中でやるらしいわよ〜」
・・・・・・・・・そんなの初耳です。
しかも何で並中?
雲雀さんかな・・・いや雲雀さんだな。あの人ならやりそうというか主催者脅してそう。
夏は稼ぎ時だもんね。
・・・てちょっと待て。知り合いだけではあき足らず雲雀さんにまでこんな格好を見られたら・・・・・・間違いなくトンファーの餌食だ。風紀を乱すなとか言って。
あ、でももしかしたら俺だって気づかれないかも。何せ自分でも驚いた位だし。
そして何より風呂掃除免除!!これは結構効く。
それに母親は子供に可愛い服を着せたがるものだって確かハルから聞いたことがある。
ここは母さんの願いを叶えてやるか。
と、そう思った俺が馬鹿だった。
これからどんな出来事が待ち構えているとも知らずに・・・。