小説(リボーン)連載

□お泊まり
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そして湯船に入ろうとした時。
 
「スクアーロ、髪っ」
 
「あ"ぁ"?」
 
「髪、そのままで入るのか?!」
 
「あ"ぁ…まずいのか?」
 
そう言って、体にへばりついた長い銀髪を邪魔そうにいじる。
すると山本は何かを思い出したような顔をし、「ちょっと待っててな!!」と言って脱衣所へ走って行った。
そしてすぐに戻ってきた。
………何やらわっかのようなものを持って。
 
 
「…なんだぁこりゃぁ」
 
それを見てスクアーロが不思議そうに尋ねる。
 
「弁当箱止めてたゴム。これで髪縛っとけって。そのまま入ったらどっかに絡まりそうだろ?」
 
ここにルッスーリアがいたら「そうじゃなくて、髪が痛むでしょ!!」と熱弁していただろう。
 
「まぁ…邪魔になるかぁ…」
 
仕方ないというように、スクアーロはそれで適当に髪を縛った。
いわゆるポニーテールだ。
 
「アハハ、スクアーロかっこいいのなっ」
 
「なっ………」
 
ストレートすぎる山本に戸惑うのはいつもの事であった。 
 
 
 
 
 
 
それからそれぞれが楽しんだかどうかは謎だが、十分温まってから上がった。
 
 
脱衣所にはドライヤーも設置されていて、そこには仕切りがあった。
スクアーロはタオルで適当に髪を拭くと、全員に向かって言い放った。
 
「う"お"お"お"い!!いいかおまえらぁ!!絶対ぇ覗くんじゃねぇぞぉ!!!!」
 
そして仕切りの向こうへ入って行った。
 
 
 
「………何だあれ…?」
 
山本はポカーンと口を開けた。
 
ツナは「鶴の恩返しじゃないんだから…」とつっこんだ。
 
「覗くなって言われると覗きたくなるよね〜普通」
 
仕切りの向こう側からはドライヤーの音が聞こえる。
髪を乾かしているだけのようだが、何故覗いてはいけないのだろうか…。
 
ベルがそぉ〜っと仕切りから向こう側を覗いた。
 
 
 
「………………………」
 
 
 
1秒で戻ってきた。
 
「ベル、どうだった?弱みになりそう?」
 
マーモンが嬉々として尋ねた。さすがである。
 
「みっ…………」
 
「“み”?」
 
ツナと山本も気になって耳を傾ける。
 
「みっ…見ない方が………いい………」
 
そう言うベルの顔は、心なしか青ざめていた。
 
……一体どんな光景を見たのだろうか…。
 
その場の誰もがそう思った時、ドライヤーの音が止まりスクアーロが出てきた。
その髪は………まさに絹のように滑らかで、かつサラサラで真っ直ぐで綺麗な銀色に光輝いていた。
 
 
「どぉしたぁ、みんなしてぇ」
 
本人はさも当たり前のようにしているが、周りからみれば十分異常な状況だった。
何を隠そう、スクアーロが仕切りの向こう側へ入ってからまだ3分程度しかたっていないのだ。
その短時間であの長い髪をここまで完璧にしたのか……。
 
 
だがさすがというべきか、山本はすぐにスクアーロの元へ行き「髪綺麗なのな〜」と褒めていた。
そしてスクアーロもいつものように顔を紅くし、それを隠すようにそっぽを向いていた。
 
 
それを微笑ましく見守る者は……この場にはいなかった。
主に自分の事で精一杯だったり、興味がなかったりという具合である。
 
 
 
 
 
ともかくも、とっても楽しいお風呂タイムになり、少年の冷徹な心に大きなトラウマを残していったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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