小説(リボーン)短編

□感情
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ツナと獄寺は階段を急いで下りたが、授業中の静かな廊下をバタバタ走るわけにもいかず、結局は2人並んで歩いていた。
 
「ビックリしたね〜」
 
「はい、まさか雲雀が来るとは…」
 
「……なんか、うやむやになっちゃったね」
 
「っ…えぇ……」
 
 
自分達の教室が見えてきた。
ツナは立ち止まり、それにつられて立ち止まった獄寺を見上げた。
 
「とりあえず、お互い想いは同じ……って事で、いい…のかな?」
 
「はっ…はい!!」
 
必死に頷く獄寺をツナは楽しそうに眺めた。
みんな獄寺君はクールだって言うけど、そんな事はないと思う。
そりゃ普段はかっこいいし怒ると怖いけど、こんなに嬉しそうに笑う時だってある。
 
つられてツナまで笑っていた。
 
 
「じゅ…10代目っ」
 
「何?」
 
「っキスしてもいいですか?」
 
「………へ?!」
 
あまりの展開の早さに、ツナはワンテンポ遅れて反応する。
 
「駄目…ですか…?」
 
「駄目って言うか…っ、まだちゃんと告白すら言ってない気がするし……」
 
「そういえば……っ。すみません!!自分、順番間違えました!!」
 
土下座しそうな勢いで謝る獄寺。
まぁ、いつもの事だが…。
 
そして赤い顔を抑えてツナを見つめる。
 
 
「10代目…いえ、沢田綱吉さん。……貴方を愛しています」
 
「っっ…」
 
火がついたようにツナの顔も赤くなる。
てっきり「付き合って下さい」とか言われるかと思っていたのだ。
さすが、イタリア人の血が流れているだけはある。
ここまで言われては、自分も言わなくてはいけないだろう。
ツナも真っ赤になった顔を抑えて獄寺を見つめた。
そして今まで言った事などない言葉を口にする。
 
「俺も、獄寺君の事が好き………あ、愛して…る……」
 
「っっ…」
 
それからしばらくは2人共うつむいたままだった。
 
 
 
とうとう獄寺が意を決したようにツナの肩をがしっと掴んだ。
 
「10代目、キス…してもいいですか?」
 
「う……うん…………」
 
ツナは恥ずかしいのを必死に堪えて顔を上げる。
そして獄寺が顔を近づけたその時―――……
 
 
キーンコーンカーンコーン
 
 
「「…………………」」
 
 
授業終了のチャイムが鳴った。
途端に教室から生徒が飛び出してくる。
2人は急いで離れ、たちまち生徒達の波にのまれた。
 
その波も過ぎると、数人の生徒を除いて廊下にポカーンと立つツナと獄寺がいた。
 
お互い顔を見合わせて、次の瞬間、どちらともなく吹き出した。
広くない廊下に、2つの笑い声が休み時間特有の雑音に混じる。
 
そこに山本が来た。
 
「よぅおまえら、サボって何してたんだ?こっちは真面目に授業受けてたってーのに」
 
台詞に反して爽やかに笑う山本。
 
 
「別に?ね、獄寺君っ」
 
「はいっ」
 
 
 
 
 
少しずつ
 
 
 
 
少しずつ
 
 
 
 
 
一緒に歩いて行けたらいいね
 
 
 
 
→後書き
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