小説(リボーン)短編

□未来と過去と今と
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※10年後です。
 ザンザス(34)×ツナ(14)。
 
 
 
 
 
 
 
 
「ザンザス、俺は白蘭を倒しに来たんだ。俺達の未来を変えるために」
 
修行の合間、ツナはザンザスにそう言った。
 
「だったら何だ」
 
 
ザンザスは現在34歳。
威厳は相変わらずだが、纏うオーラがずいぶん丸くなっている。
 
ツナは続けた。
 
「もしそれが出来たら、未来は変わる。きっと今のザンザスとはもう会えない」
 
 
「………」
 
 
「でも、今俺の目の前にいるザンザスは、ずっと俺のいない時間を生きていく」
 
 
「…………」
 
 
 
10年後に来た時は、いろんな事がありすぎて、いきなりすぎて、思いつかなかった。
 
だがこうして状況がわかってくると、やはり想うのは愛しい人で…。
 
 
「ねぇザンザス…未来は変えてもいいのかな……」
 
「何くだらねぇ事言ってやがる」
 
「だって…」
 
「確かに、多分おまえの言う通りだろう。だが、だからといって、また俺におまえを失う哀しみを背負わせる気か?」
 
「っ………」
 
 
そう。
今このザンザスは一度、ツナを失っている。
その哀しみを知っている。
 
 
彼は続けた。
 
「悩むな。迷いのあるようでは白蘭は倒せない。過去に戻る事だけを考えろ」
 
「っそうしたい…俺だって過去に帰りたい……」
 
 
けれど、そんなに割り切れるものでもなくて。
 
もうすぐ決戦。
それは言われてはいないが、何となくわかっていた。
 
 
過去に帰りたいのも本当。
 
 
この時代のザンザスが大事なのも本当。
 
 
欲張りだけど、全部選びたい。
 
 
出来る事ならこのまま彼といたい。
 
 
 
けれど出来ないのは、過去にも彼を置いてきてしまっているから。
 
 
自分はどちらかにしか行けない。
 
 
10年後のザンザスと会えるのも、多分これが最後だろう。
 
 
 
 
「……ザンザス…好きだよ…」
 
「知ってる」
 
「一緒にいたいよ…」
 
「あぁ」
 
 
お互い、強く抱きしめ合う。
 
この感触を忘れないように。
 
 
 
 
「未来で…会いたい……っ」
 
「…あぁ」
 
 
会えないのはわかってる。
 
これから未来を変えに行くんだから。
 
 
 
 
「うっ………っ…………」
 
涙が止まらない。
 
 
「綱吉、過去の俺を頼む」
 
 
「っ………」
 
 
上手く声が出ない。
ただひたすらに頷いた。
 
 
そろそろ時間。
 
一旦離れて、お互い見つめ合う。
 
 
「綱吉、愛してる。過去でも、今でも、未来でも」
 
 
「俺も、愛してる。どんなザンザスも、全部」
 
 
それから唇を交える。
 
まるで何かの誓いのように。
 
 
それが終わると、どちらともなく2人で優しく微笑み合った。
 
 
 
最後くらいは、やっぱり笑顔が見たいから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
白蘭を倒し、過去へ戻る事が出来た。
 
10年前に帰ってきて、まずザンザスに会った。
 
きっと待っていてくれたのだろう。
 
その姿を見た瞬間、涙が溢れてきた。
 
自分よりだいぶ年上のはずなのに、それでも10年後の彼と比べるとずいぶん幼く見える。
 
たまらずザンザスに抱きつく。
 
10年後とは少し感触が違った。
 
あの時の感触が今と溶け込んでいく。
 
 
これからの10年後もこうしていたいから、だから未来を変えてきた。
 
後悔はない。
 
それでも、まだ涙は止まらない。
 
 
ザンザスは全てを察しているのか、ただただ強く抱きしめ返してくれた。
 
 
 
 
 
 
これから
 
 
 
せめてここにいる俺達だけでも
 
 
 
幸せになろう
 
 
 
一緒にいよう
 
 
 
 
ずっと
 
 
 
 
ずっと
 
 
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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