小説(リボーン)短編
□デート
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並盛駅。
その名の通り、平々凡々な駅である。
ツナは駅前に着くと、ザンザスを探そうと辺りを見回した。
だが、探すまでもなかった。
軽い女性の群れの中心にザンザスが見えた。
女の子達が何か言ってきても、興味がなさそうに、むしろうざったそうにしている。
だが待ち人を見つけた瞬間、それらの群れを無視して真っ直ぐにやってきた。
「よぉ」
「・・・お・・・おはようございます・・・」
9時40分。
待ち合わせの時間までにはまだあと15分あった。
「早ぇーな」
「ザンザス・・・こそ」
言いにくそうにつっかえるツナ。
やはり、呼び捨ては少し慣れないらしい。
ザンザスは名前を呼ばれ、ふっと笑う。
今まで高笑いか企みを込めた笑みしか見たことのなかったツナは、いきなりザンザスが優しそうに笑うのを見て焦る。
「・・・・・・っ」
何やらわたわたしているツナを、ザンザスが不思議そうに見つめる。
「何やってんだ?」
「いいいいえ・・・」
本人達にそんな自覚はないが、端から見るとまるで付き合いだしたばかりのカップルのようだった。
そんな2人の様子を少し遠くから覗いていた4人。
ザンザスがツナに近づいた時は、獄寺がダイナマイトを持って飛び出しそうになるのを山本が慌てて阻止していた。
だが戦う様子はないとわかって安心しかけた獄寺は、2人の異様な雰囲気にまたダイナマイトを構える。
「あんの野郎〜10代目に馴れ馴れしく・・・っ」
「ししししっ。ボスのお宝写真ゲーット♪」
「何かいい雰囲気だよなぁ〜」
「・・・・・・あのザンザスが・・・あんな顔を・・・・・・」
他人の家の塀から駅を覗いている4人は、端から見れば十分にあやしかった。
「やっぱ、戦った後は和解だよな」
山本が突然そう言い出した。
「は?」
スクアーロが反応する。
「っつー訳で、仲良くしよーぜ、スクアーロ」
そう言いながら山本はスクアーロに向かって手を差し出す。
さっきまでベルと普通に話していたので、今更な気もしなくはないが。
「・・・なんだぁこの手はぁ」
スクアーロが眉をしかめて言う。
山本は「そっかぁ」と何かに気づき、説明しだした。
「日本では握手ってのがあって・・・・・・」
「んなこたぁ知ってる。何の真似だって聞いてんだぁ」
こいつは天然かと思ってしまう。
「だから、和解。もう敵じゃねーんだし。な?」
そう言って山本が二カッと笑う。
――――ドクン。
「っっ??!!」
スクアーロが慌ててきょろきょろ周囲を見回す。
「何やってんの?スクアーロ」
ベルが不審者でも見るような目で見る。
「いや・・・・・・」
さっきの音は自分だったのか・・・と確信する。
何故こんなに緊張しなければならないのか。
何故山本が可愛いと一瞬でも思ってしまったのか。
普段使わない感覚を刺激され、スクアーロはパニック状態に陥った。
そんなこんなで駅前にいたツナとザンザスは歩き出し、普通にデートコースを楽しんでいたのだった。
もちろん、ツナは最後に行き着く場所が何処だかを予想すらしていなかった。
→後書き