小説(リボーン)短編

□帰り道
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「ん?どした?スクア―――・・・」
 
ロと言う前に、山本の唇はふさがれていた。
もちろん、名前を呼ぼうとした彼によって。
 
「っ・・・んんっっ・・・・・・」
 
舌を絡ませてたっぷり味わってから、名残惜しそうに唇が離れる。
顎までつたっている液がどちらのものか、いやそれが唾液なのか雨なのかすらわからなかった。
 
「ちょっ、スクアーロッ・・・いきなりっ・・・こんなトコで・・・・・・」
 
まだ呼吸が整わない山本。キスは今までにも何回かしているが、まだ慣れない。
 
 
「・・・すまない。おまえがあんまり色っぽいもんだから・・・」
 
「は?!」
 
目を丸くしている山本をぎゅっと抱きしめる。
いつもよりお互いの肌が近い。どちらともいえない心臓の音がドクドクと脈打っている。
 
 
 
「武・・・・・・」
 
「・・・ん?」
 
耳元で名前を囁かれて、山本の顔がさらに紅く染まる。
 
「今度・・・おまえん家泊まりに行っていいかぁ・・・?」
 
「へ?あぁ・・・うん。別にいいけど?」
 
軽〜くそう返され逆に面食らうスクアーロ。
 
 
「・・・・・・・・・おい武ぃ」
 
「ん?」
 
「おまえ・・・意味わかってんのかぁ?」
 
「何が?」
 
どうやら理解していない山本の肩をがしっと掴み目を合わせる。
 
「泊まりに行くっつってんだぞぉ」
 
「あぁ。いいぜ?」
 
 
「・・・・・・」
 
 
絶対わかってない・・・・・・。
 
 
実はこの2人、未だキス止まりなのである。
それもこれも、今のように山本が天然でスクアーロの遠まわしな誘いに気づかないからである。
だが今日のスクアーロはいつもとは違った。
雨に濡れた恋人を見て、さすがに我慢も限界に近い。
 
 
 
「わかってねぇようだから言っとくが・・・」
 
そう言ってスクアーロはもう一度深いキスをする。
そして離れ際に山本の唇をぺロッと舐め、真っ直ぐに見つめて言った。
 
「これ以上の事をするってことだぜぇ」
 
「っっ!!!!」
 
それでようやく鈍い山本も理解したらしい。
カァァッと顔を先程より紅くしてスクアーロを見た。
 
 
「えっと・・・あ・・・う・・・・・・」
 
口篭もってしまった山本を見て、スクアーロは彼の頭をぽんぽん叩いて優しく言った。
 
「ちょっと言ってみただけだぁ。いきなり悪かったな、気にすんな」
 
そう言って先程落とした酒の入ったビニール袋を拾い、また歩き出す。
 
だが山本がついて来ない。
 
「武?」
 
振り向くと、下を向いて拳を握り締める山本がいた。
 
「武?どうした?さっきの事なら俺が悪かっ――・・・」
 
「スクアーロ!!」
 
悪かったと言おうとしたスクアーロの言葉を遮り、キッと覚悟を決めたように真っ直ぐ彼を見つめる山本。
だがまだ顔は紅い。
 
「どうしたぁ?」
 
まだ雨が降っている為、聞き取りにくいので少し戻る。
 
「こっ今度の休みっ、泊まりにこいよっ。待ってるからっ。ちゃんと大丈夫だから!!」
 
 
「っ・・・!!」
 
 
今度はスクアーロが紅くなる番だった。
しばらく雨の音だけがその場を支配した。
先に口を開いたのはスクアーロだった。
 
 
「う”・・・う”お”お”お”い・・・いいのかぁ?その・・・何つーか・・・・・・」
 
言い出したくせに何と言う気の弱さ。
 
「いいんだ!!おっ俺だって、したくないわけじゃ・・・」
 
 
「「・・・・・・・・・」」
 
 
またまた口をつぐんでしまった2人。
お互いものすごく気まずくなってしまった。
 
 
 
 
 
「とりあえず・・・歩くかぁ」
 
「そだな・・・」
 
山本も鞄を持ち、スクアーロと並んで歩き出した。
 
 
 
「ス、スクアーロの・・・今度の休みって・・・いつ?」
 
「あ?あぁ・・・。・・・・・・明日・・・だが・・・・・・」
 
「あ、明日ぁ?!」
 
ちなみに明日は第2土曜日で学校も休みである。
 
 
「「・・・・・・・・・」」
 
 
お互い立ち止まってしまった。
 
 
 
 
「・・・明日・・・ウチくるか・・・?親父が知り合いと旅行行っちまうんだけど・・・」
 
「っ!!」
 
なんてナイスなタイミング!!と思わず心の中でガッツポーズのスクアーロ。
 
「じゃあ・・・明日邪魔するぜぇ」
 
「・・・あぁ」
 
気づけば立ち止まったすぐそこは竹寿司の真ん前だった。
 
「スクアーロ、気をつけてな」
 
「う”お”お”お”い、誰に向かって言ってんだぁ」
 
「確かに。傘持ってくか?」
 
「今更だぁ」
 
「それもそうだな」
 
「おまえこそ、ちゃんと体拭いとけぇ。風邪ひくんじゃねぇぞぉ」
 
「わかってるって。明日は特別だからなっ」
 
「・・・その余裕も今のうちだぁ」
 
「え”・・・」
 
「冗談だぁ。じゃあなぁ」
 
そう言ってスクアーロは雨の中去っていった。
 
 
 
 
「余裕なんて・・・あるわけねぇじゃねーか」
 
家の中に入りながら、やっぱりタオルくらい渡しておくんだったと思った山本だった。
 
 
 
 
 
 
そしてこの時の山本は、明日スクアーロの筋肉と体力の強さに驚くことになるのをまだ知らないでいた。
 
 
 
 
 
→後書き
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