小説(リボーン)短編

□ありがとう
1ページ/2ページ

突然、ザンザスが家に来た。
しかも大量の花束を手に。
 
「・・・どうしたのそれ」
 
「おまえに似合うと思って買ってきた」
 
そう言って差し出されたのは、白やピンク、黄色などの可愛らしい色の小さな花たちだった。
 
 
「これが?俺に似合う・・・?」
 
ザンザスから見た俺ってなんなんだろう・・・。
でも相手は至って真剣。
とりあえず、ありがたくもらっておくことにした。
 
 
 
と、そういえばと思い出して、ツナは今まで練習してきたある言葉を言った。
まさかこんなに早く使えるとは思わなかったが。
 
 
「Grazie」
 
 
「・・・・・・・・・は?」
 
ぽかーんと、何とも間抜けな顔をされた。
こんな彼を見たのは初めてかもしれない。
―――いや、初めてだ。
だが、どうやら伝わってない・・・?
せっかくいつかの為に練習してたのに・・・。
発音がなってなかったのかな?
そう思い、ツナは先程より慎重に繰り返した。
 
 
「Grazie」
 
 
「・・・・・・・・・」
 
 
今度は黙られた。
そして―――・・・・・・抱きしめられた。
花束はパサッとその場に落ちる。
あぁ勿体無いと思う余裕はツナにはなかった。
 
「ちょちょちょっ・・・・・・ザンザス?!」
 
ここ玄関前だし!!
・・・そういう問題でもない気がするが。
 
 
「もう一回」
 
「は?」
 
「もう一回言え。さっきの言葉」
 
「“Grazie”?」
 
そう言ったら、さらに強く抱きしめられた。
 
 
 
「どうしたの?ザンザス」
 
するとザンザスは、超直感がなくてもわかる程嬉しそうに言った。
 
「イタリア語・・・練習したのか?」
 
「うん。とりあえずさっきのしか言えないけど・・・」
 
それでも発音が難しかった。
ていうか通じていたのかさっきの言葉。
 
 
「発音・・・大丈夫だった?」
 
「まぁ、意味が取れる位には」
 
・・・・・・もう少し勉強してから使うんだった・・・。
そう思うツナだが、英語すらまともに話せないツナなら仕方がない・・・いや、上出来だろう。
 
 
 
「もしかして・・・嬉しかった?」
 
思わずそう聴いてみた。
どうせ素直な返答は期待出来ないと思っていたが、意外にも嬉しそうに頷かれた・・・と思う。
抱きしめられている為、斜め上でザンザスの頭が縦に動いたように感じただけだから確信はないが。
 
 
 
 
「イタリア語ってなんか英語より難しい気がするけど、俺はこれから先こっちのが使うかなって思って・・・」
 
それも悲しい気がするが。
 
「だから、ちょっとしたトコから使ってみようかなって・・・」
 
何だか言い訳してるみたいだ。
本当は、ザンザスの母国語であるイタリア語を知りたかっただけ。
マスター出来ないにせよ、ちょっとでもイタリア語で彼と話したかっただけ。
そうしたら喜んでくれるんじゃないかと思ったから。
 
 
 
「えと・・・出来が悪い生徒になると思うけど、ザンザスが俺のイタリア語の先生になってくれたら嬉しいな。・・・・・・ダメ?」
 
恐る恐る、彼の腕の中で尋ねる。
すると、耳元で囁かれた。
 
「なってやる。おまえの専属教師に・・・」
 
言われた事は普通なのに、何だかアヤシク聞こえてくる。
 
 
「Grazie」
 
 
今度は自然に出た。
頑張って練習したかいがあったなと思う。
 
 
「もちろん、授業料は払ってもらうけどな。・・・おまえの体で」
 
「っ??!!」
 
何ソレ何ソレ。
 
それなら―――・・・・・・・・・
 
 
 
 
「それなら自分でやります―――っ!!」
 
 
 
ツナはそう言ってザンザスを突き飛ばし、何処へともなく走って行ってしまった。
 
そして後には、静かに苦笑するザンザスの姿があった。
 
 
 
 
→後書き
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ