小説(リボーン)短編

□出会えた奇跡
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雲雀は暗くなった校舎を見回る。
これはいつもの事だ。
人がいるかどうかだけでなく、破損があるかどうかも入念にチェックする。
 
今日は開校記念日で休みだが、それでもここには必ず毎日来る。
 
 
前日のある程度の傷はあったものの大した事はなく、雲雀は鞄を取りに応接室へと戻った。
 
 
 
 
「……………………誰」
 
ドアを開けると、見たことのない人物が立っていた。
電気がついていなかったため薄暗くて良く見えないが、どうやらここの生徒らしい。
 
かろうじて並中の制服を着ているのはわかった。
男だ。しかも結構背が高い。
 
 
「………とっくに下校時刻は過ぎてるよ。しかも何でここにいるのさ」
 
するとその男子生徒は、高すぎず低すぎない声で答えた。
 
「君もここの生徒だろ?それに俺の帰る場所はここだから」
 
「……何言ってるの?とにかくここは僕の場所なんだから早く出てって」
 
「いいや、ここは俺のだ」
 
男子生徒は臆することなく堂々とそう言ってのけた。
 
一方雲雀は軽く驚いていた。
この学校、いや並盛で自分に逆らう者など今までいなかったからだ。
なのに目の前の人物は少しも怖がらないし、それどころかかなり偉そうだ。
 
顔を見ようと電気をつける。
すると一気に部屋が明るくなった。
 
 
「……………」
 
まず目に入ったのは、キラキラと光る綺麗な灰色の髪。
いつも何かと騒ぎを起こすハーフの転校生も灰色の髪をしていたが、それとは比べ物にならない程輝いていた。
そしてそこから見える深緑の瞳。
 
見た事はない。
ない…はずなのに……ずっと見てきたような気がした。
 
彼を、彼の存在を。
 
 
 
「どうした?雲雀恭弥」
 
そう言った顔は、悔しいがかなり整っていた。
 
 
「……君、誰?」
 
「ここ」
 
「は?ふざけてるの?冗談に付き合う気はないよ」
 
「本当はわかってるくせに」
 
「……………」
 
そう、本当は気づいている。
でもそう思いたくないだけ。
認めたくないんじゃない、信じられないのだ。
 
 
“ここ”
それはつまりは自分達が今いる“ここ”なわけで。
 
“ここ”はもちろん………
 
 
 
「俺は並盛中。いや、並盛中の校舎って言った方が正しいかな、風紀委員長さん」
 
 
驚きはしなかった。
なんとなくわかっていたから。
 
 
 
雲雀は後ろ手に握り締めていたトンファーをしまう。
 
 
並盛中を傷つける者は許さない。
 
例えそれが自分であっても………。
 
 
 
 
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