小説(リボーン)短編

□ティータイム
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「・・・ただいま」
 
「?!」
 
いきなり後ろから声がしたかと思ったら、クロームが立っていた。
しかし驚いたのはスクアーロだけ。後の2人は慣れているのか大して反応を見せなかった。
というか仮にもヴァリアーであるスクアーロが、背後に立たれても気づかなかったのは・・・どうなのだろう。
 
 
「クローム、お客さん」
 
そう言って千種がスクアーロを見る。
 
「私に?・・・何?」
 
ぼ〜っとした目で見られて、本当にこいつがあのアルコバレーノのマーモンに勝った奴かと思う。いや、実際はあの六道骸が勝利したのだが。
スクアーロはソファから立ち上がりクロームの前に立つ。
 
「ある仕事をやってほしい。幻術師でなけりゃ出来ねぇ仕事だ。生憎こちらの幻術師が留守でな」
 
同じ質問をされても面倒くさいのでマーモンがいない事を先に告げておく。
 
「いつ?」
 
「明日だぁ」
 
「駄目」
 
「・・・はぁぁ?!」
 
即答で断られた。
 
「う”お”お”お”い!!わざわざここまで来たんだぞぉ?!」
 
「そっちの都合なんて関係ない」
 
・・・まぁ、確かに。
 
 
「何か理由が?」
 
千種が口を挟む。
普段あまり会話に加わらない彼の行動に、犬が意外とばかりに目を丸くした。
 
「・・・明日は予定が出来たの」
 
「?おまえ、明日は暇って言ってたびょん」
 
「今日出来たの」
 
「何?」
 
千種が眼鏡をくいっと上げる。
 
 
「・・・明日は、ボスとお出かけなのv」
 
そう言うクロームの頬が紅く染まった。
 
 
「ってまさか、それが理由か・・・?」
 
無言で頷くクローム。
 
「ちょっ・・・仕事よりそっちかよ?!」
 
「当たり前。ボスとお出かけだもの」
 
「う”お”お”い!!怒られんのは俺なんだぜぇ・・・」
 
「だからそっちの都合なんて知らない」
 
「・・・・・・」
 
どうやら引き受けてくれそうにない。
こうなったら早めに変わりの幻術師を探す方がいいかと思い始めたスクアーロ。
 
だがその時―――
 
 
「クローム、それ明後日に変更出来ないの」
 
「?!」
 
千種の突然の言葉に驚いて振り返る犬とスクアーロ。
明らかにスクアーロの味方をしている。
 
 
「・・・聞いてみる」
 
そう言うとクロームは携帯電話を取り出し、電話をかけ始めた。
おそらく沢田家かツナの携帯電話にかけているのだろう。
スクアーロはもうしばらく待つことにした。
 
 
 
パチ、と音をたててクロームの携帯電話が閉じられた。
 
 
「・・・ボス優しい」
 
「って事は・・・」
 
「明日の仕事、引き受けます」
 
その台詞を聞き、スクアーロはハァ〜とソファに座り込む。
 
「助かったぁ・・・。じゃあ頼むぜぇ。詳細は今日の夜にでも部下が来て知らせるはずだぁ」
 
そう言うとスクアーロはまた立ち上がって帰ろうとする。
 
 
 
 
 
「あぁそうだ」
 
ドアの前で振り返り、千種を見る。
 
「ありがとなぁ、柿本、助かったぜぇ。それと、ごちそうさん。うまかった」
 
それから律儀にも「邪魔したなぁ」と言い、帰って行った。
 
 

 
 
 
「「「・・・・・・・・・」」」
 
 
 
しばらく応接室内は沈黙に包まれた。
最初に口を開いたのは犬。
 
「千種、何かした?」
 
「何が」
 
無表情で質問に質問で返す千種。
 
「だってあのヴァリアーが“ありがとう”って!!何かイメージと違うびょん!!」
 
「・・・別に。ただ紅茶とクッキー出して接客しただけ」
 
淡々と言うと、千種は自分の部屋へ戻っていった。
 
 
「・・・でも、明らかにあいつを庇ってたびょん」
 
なぁクローム、と言おうと後ろを振り返ったが、すでにこの部屋には犬しか残っていなかった。
 
 
 
「・・・・・・みんな、マイペースすぎるびょん・・・」
 
その声はむなしく応接室に響いた。
 
 
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