小説(リボーン)連載
□お見舞いU
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―――ガチャ
「「…………」」
沈黙。
誰かが入って来たのはわかったが、ザンザスに抱き締められていて、ツナにはそれが誰なのかわからなかった。
「お…お邪魔しまし……」
「邪魔じゃねーぞ」
「リッリボーン?!」
ツナの声が裏返る。
というか、今明らかに山本の声がした。
友達にこんな所を見られ、ツナは見るからにショックを受けた。
男に添い寝してもらっているなんて、恥ずかしい事この上ない。
「寿司は持ってきたか」
「あぁ。…ようツナ、風邪はどうだ?見舞いに来たぜ」
何事にも対応出来る男、山本武。
ツナは今、彼の懐の深さを垣間見た気がした。
何とかザンザスの腕から抜け出し、上半身を起こす。
小さなテーブルの上に、冷めたお粥が置いてあった。
……という事は……
「母さんにまで見られた…」
ザンザスと仲良く寝ている所を、ばっちりきっちり見られてしまったのだ。
だがあの母親のことだ、きっと「あらあら〜ツッ君たら」とか言って山本並の反応で普通に部屋を出て行ったに違いない。
だが見られたのがこの2人だから良かったものの、ここに獄寺やなんかが来たら―――…
「十代目――!!」
いきなり玄関からそんな叫び声。
こんな呼び方をするのは彼しかいない――。
ドタドタと階段を上る音。
せめてベッドから降りなければとツナは慌てて立ち上がろうとするが、隣にいるザンザスに腰を掴まれてしまう。
「まだ完治してねーだろ。寝とけ」
って、それどころじゃないんだってばぁ〜!!
―――バンッ!!
「十代目!!御気分はいかがで……」
やはり言葉が途切れる獄寺。
ちょうど、ザンザスがツナの腰を掴んで引き寄せているところだった。
「ご…獄寺君…」
「十…代…目…?」
獄寺の手からビニール袋が滑り落ちた。
見舞いの品だろうか。
それをリボーンが取り上げ、中身を確認する。
「よくやったな獄寺。最高級品じゃねーか」
「あ…リボーンさん…」
我に返って曖昧に頷く獄寺。
山本はもう余裕の表情…というか楽しそうに目の前の光景を眺めていた。
「獄寺君っ、こ…これは…その…あの…………おっ、お見舞いっ、来てくれたの?!ありがとうっ!!」
弁解するつもりが何も思いつかず、話をそらしてしまった…。
「は…はいっ。リボーンさんの言う通り、キャビアを……」
「キャ…キャビア?!何で?!」
さっき落としたのはキャビアだったのか…。
リボーンが素早く取り上げた訳がわかった。
「風邪にはキャビアが良いと聞きましたので!!」
もはや開き直った獄寺。
尊敬する十代目が気にしないのならば、自分も気にしないことにした。
実際ツナ自身は物凄く気にしていたのだが。
それよりも――……
「風邪にはキャビアって…獄寺君、それ誰に聞いたの……?」
「え?リボーンさんに…」
リボーンに目をやると、微かに一瞬笑った気がした。
…絶対、自分が食べたかっただけだ…。
聞くと、獄寺は授業をサボって海外から高級キャビアを高速で取り寄せていたらしい。
彼の顔には達成感が見てとれた。