小説(リボーン)連載
□お泊まり
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山本は深呼吸をして、門の横にあるインターホンを控えめに押した。
いつもはスクアーロが山本の家を訪ねていたが、今日は違った。
山本の父親が同窓会で2泊3日の旅行に行くというので、山本は家に一人になってしまう。
なので、その間ヴァリアーが日本に持つ拠点場所へ泊まりに行く事にしたのだ。
家事が出来ない山本。
3日くらいはなんとかなると言ったが、心配性なスクアーロに、どうせその間カップ麺やらコンビニの弁当しか食べないし掃除もしないだろうと言われ、自分の元へ来いと呼び寄せられたのだ。
とりあえず服やら学校の教科書やらを持って、言われた場所へ向かった山本。
教えられた住所は意外にも並盛中の傍だった。
――そして今に至る。
インターホンから「入れぇ」と言うスクアーロの声が聞こえ、門が開いた。
「………広っ」
建物に入り、第一声がそれだった。
こんな広い場所が並盛にあったのかという程広かった。
入口でどうしようかと迷っていると、奥から良く見知った2人が出てきた。
ベルとマーモンである。
「あっれ〜早いね〜」
「話は聞いてるよ。ま、ゆっくりしてきなよ」
そんな優しい(?)言葉に、山本も「しばらく世話になるぜっ」と笑顔で返した。
それからスクアーロが来て、とりあえず部屋に荷物を置き、大体の場所を案内した。
暇なのか、ベルとマーモンもくっついてきた。
「……ホンット、広いのなー」
一通り建物内を回って、応接室で一息つく。
スクアーロが用意した紅茶とクッキーを囲んでソファーに座った。
「そぉ〜?本部はこの数十倍位はあるけど〜」
ベルがさらっとそう言ってのけた。
するとマーモンがソファーから乗り出してきた。
「ところで山本武」
「ん?」
「綱吉は来ないの?」
目はフードで見えないが、期待ですごくキラキラしているに違いない。
山本は申し訳なさそうに「来たのは俺だけなんだなぁ」と言った。
マーモンはあからさまに残念な顔をして、紅茶をちびちびと飲み始めた。
「う"お"お"お"い!!失礼だろぉがぁマーモン!!」
「いいってスクアーロ。マーモンはツナが大好きだもんな」
そう言われたマーモンは頷きそうになり……一旦辺りを見回してから思いきり首を縦に振った。
そんな様子を山本は不思議そうに見る。
するとベルが補足説明をした。
「ボスがいないか確認したんだよ。ボスの前で綱吉が好きだなんて言ったら、いくらマーモンでも焼け焦げるだろうね」
「あぁ、なるほど」
納得である。
それから軽くくつろいだ後、とりあえずは解散となり、山本はスクアーロと共に部屋へ戻った。
ちなみに、2人の部屋は別々だ。
「食事は1階にいるコックに言やぁ作ってくれるはずだぁ。風呂の場所は教えたな。後はなんかあるかぁ?」
丁寧に再確認してくれるスクアーロ。
山本には、1つだけ気になる事があった。
「なぁ、風呂ってあれだけか?」
「あ"ぁ"?風呂?…まぁ、さっき見せた1つしかねぇが…滅多に重なる事はねぇぞぉ?」
「違う違う。やっぱし外人さんってシャワーだけなのな」
「…?」
山本が何を言いたいのかいまいちよくわからないスクアーロ。
「っ!!スクアーロ、今日仕事は?」
「は?…いや、もうねぇが……」
何故いきなり仕事の話?!
相変わらずよくわからない山本の言動に混乱するスクアーロ。
「じゃあさ、これから銭湯行こーぜ」
「………せんとう…?」
一瞬“戦闘”を思ったが、こいつに限ってそれはないだろうと思う。
「日本のデカイ風呂だよ。すぐ近くにあるからよ、行こーぜ、みんなで」
ニカッと笑う山本にスクアーロが逆らえるはずもなく、反射的に頷いていた。
「……って、ん?みんな……?」
スクアーロは一抹の不安を覚えた。