短編小説置き場(その他)

□関係が変わった日
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そんな事があってから、今までとは少しだけ関係が変わった2人。
 
それをチチが知ったのは、それから1週間程後の事。
 
そしてチチがそれをブルマに伝えたのが今から3日前。
 
早速イベント好きのブルマが食いついたのだ。
まぁ、最近は事件もなく暇で退屈だったというのが本音かもしれないが。
 
 
 
「じゃあ決まりね!次の日曜日、ウチで披露パーティーよ!」
 
ブルマがウキウキしながら言うと、悟飯が「ちょっといいですか?」と口を挟んだ。
 
「僕はいいのですが、ピッコロさんが頷いてくれるかどうか……」
 
「「「……………」」」
 
確かに。
多少丸くなったとはいえ、あのピッコロの事だ、くだらないだのと言って来てくれないかもしれない。
 
 
すると、チチが言った。
 
「この際、ピッコロさには内緒にしとくのはどうだか?」
 
「え!?でも……」
 
迷う悟飯に、ブルマが大賛成する。
 
「そうよぉ、その手があったわ!何か理由つけて連れて来ちゃえばこっちのもんよ」
 
「でも……」
 
数日とはいえ、恋人に秘密をつくのが躊躇われた悟飯。
ピッコロは力もあるが、頭もいい。
気付かれはしないだろうか。
 
「大丈夫だ、オラと悟空さが協力すればいいだ。な?悟空さ」
 
チチが悟空を見れば、悟空も「任せとけ!」と胸を叩く。
 
だがそれが、悟飯とブルマは心配だった。
彼が嘘をつけないのは知っている。
感情が表に出やすい事も。
 
「孫君?貴方はむしろ今日の事を忘れた方がいいわっ」
 
「へ?」
 
「そうです父さんっ、気にしたらボロが出ちゃうかもしれませんよ」
 
「そっか?」
 
じゃあ忘れるか、と悟空はあっけらかんと言った。
 
だが、問題はどうやってピッコロを連れ出すか。
 
「それならオラにいい考えがあるだ」
 
チチが自信満々に笑った。
 
 
 
 
 
 
 
そして今日に至る。
 
盛大な拍手を浴び、ピッコロは「どういう事だ…」と悟飯を見た。
 
「すみません、ピッコロさん…」
 
「おまえの晴れ舞台だと言うから来てやったのに…何だこれは」
 
「いや…まぁ、晴れ舞台ではあるんですが…」
 
 
 
昨日、チチがピッコロにこう言ったのだ。
 
「明日、悟飯ちゃんの晴れ舞台があるだ。恋人ならピッコロさも行くべきだ」
 
何の晴れ舞台かは教えてくれなかったが、可愛い弟子…いや、恋人の晴れ舞台とあっては、無下に断る事も出来ない。
それがカプセルコーポレーションで催されるというから来たのだ。
 
悟飯は確かにお気に入りだと言う服を着ていたし、会場も広い。
ただ、勉強の何かで成果を出したのかと思っていた。
 
時間が来たら会場に入るらしく、ではギリギリまで悟飯といて裏方から見守ろうとしたら、突然腕を引っ張られて会場に出された。
 
しまった。
ブルマの声が聞こえた時点で不審に思うべきだった。
 
 
入った途端に眩しいライトと盛大な拍手。
会場内にいるのは、見知った顔ばかり。
ステージ上の垂れ幕を見れば、「おめでとう!悟飯とピッコロがついに恋人同士に!」と書かれていた。
 
 
「そういう事か……」
 
ため息をつくピッコロに、悟飯が慌てて謝る。
 
「ごめんなさいピッコロさん。僕もここまで盛大だとは…」
 
「いや、いい。大体はあの女がやった事だろう」
 
どうやら帰ろうとはしないピッコロに、悟飯はホッとした。
 
 
 
それからはいつものように飲んだり食べたり。
わいわいがやがやと騒がしくなった。
もちろん、主役のピッコロの為に厳選された水も用意してある。
 
 
2人で静かに周囲の騒ぎを眺めていると、そこから程よく酔ったブルマが絡んできた。
 
「ほらほらぁ、2人は主役なんだから騒いだ騒いだ!」
 
「いえ、僕達は……」
 
ちょっと、あの中に入っていく勇気はない。
 
 
「ところで、どっちが告白したの?」
 
「「えっ?」」
 
ブルマの質問に、チチやクリリンもやって来た。
 
「告白…?」
 
ピッコロが言うと、ブルマが「ピッコロは悟飯君と恋人になる時、何て言われたの?」と尋ねる。
 
「あぁ、確か…」
 
「わ―――っ!!何言おうとしてるんですかピッコロさんっ!」
 
「ダメなのか?」
 
「っ…………」
 
悟飯はガクッと肩を落とす。
この恋人は、たまに天然すぎて困る。
 
 
「そっそれより、ブルマさんはベジータさんに何て言われて付き合ったんですか?」
 
話をそらしたくて聞くと、酔ったブルマはコロッと頭を切り替えた。
 
「そうね〜……知りたい?」
 
「はい!」
 
話をそらしたいのもあったが、あのベジータが言う愛の言葉というのも気になる。
 
そこへ、食べていても話は耳に入っていたのか、ベジータが慌ててやって来てブルマの口を塞いだ。
 
「何を言おうとしてやがる!」
 
塞がれた手をなんとか退けると、ブルマは口を尖らせる。
 
「何よ、いいじゃない別に」
 
「ふざけるな!その減らない口を閉じないと、今ここで犯すぞ!」
 
「あらぁ〜?アンタに出来るの?こんな大勢の前に私の裸がさらされるのよ?」
 
「うっ…」
 
「「あ、俺らは問題ないっス」」
 
「黙れ!」
 
声を揃えたヤムチャとプーアルは一蹴された。
 
 
「くだらん」
 
ベジータはそう言うと、会場を出ようとする。
ブルマは慌ててそのあとを追った。
 
 
 
 
 
「…………」
 
「悟空さ?どうしただ?」
 
一連の騒ぎを見ていた悟空は、珍しく食事を中断する。
チチが心配になって傍によった。
 
 
「オラよぉ…」
 
「……?」
 
「チチに告白?とかしてねぇよなぁ…」
 
「なっ……そっそんな事は最初からわかってるだよっ。悟空さは言葉にするのが苦手なだけだ」
 
「でもよぉ……」
 
納得のいかない悟空。
 
そしてしばらく考えると、ふいに立ち上がりチチの手を取った。
 
「オラ、チチの事、でぇ好きだぞ!」
 
「悟空さ……」
 
チチは頬を染めて夫を見上げる。
そして「オラもだ!」と言って悟空に飛びついた。
 
 
 
 
「……………」
 
「……………」
 
そんな様子を、悟飯とピッコロは黙って見る。
 
「恥ずかしいな……でも、お母さん嬉しそうだ」
 
「孫も、やる時はやるのだな」
 
結局、披露パーティーはただの飲み会へと化していた。
 
 
 
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