短編小説置き場(その他)

□ブリーチドマイナー
4ページ/10ページ

 
[イヅル×茶渡]
 
 
 
吉良イヅルは、現世に来ていた。
だが仕事ではない、観光だ。
真面目に働くイヅルを見かねた隊員達が、無理矢理休暇を押したのだ。
流されるままに休暇届けを出し、隊員達により仕事の出来ない現世へ送られた。
隊員達には感謝したいが、特にする事もない。
 
とりあえず義骸に入ると、イヅルは町中を歩き始めた。
特にあてもないが、天気も良いので気晴らしにはなる。
 
 
「………ん?あれは確か……」
 
前方から大きな人物が歩いてくる。
イヅルは彼に見覚えがあった。
 
 
 
「久しぶり」
 
「………………」
 
話しかけるが、無言が返ってくる。
 
「えと……黒崎一護の仲間の…茶渡君…だよね?…僕の事覚えてる…?」
 
「………あぁ」
 
やっと返事をした茶渡。
学校の帰りだった。
 
イヅルは、話しかけた事を後悔し始めていた。
会話が続かない。
そういえば、彼が話したところをあまり見た事がなかった。
 
 
「………何故ここへ…」
 
「え?あ……休暇でね、隊員達に無理矢理……」
 
イヅルはハハハ…と苦笑し、「でも何をしたら良いか…」と付け加えた。
 
 
 
「……………水族館」
 
 
「……へ?」
 
 
茶渡の突然の言葉に、イヅルは思わず声を裏返した。
 
「空座町に水族館がある。……大きくはないが…」
 
「……うん…?」
 
「…………行くか?」
 
「え……」
 
なるほど、誘ってくれていたのか…。
 
「嫌なら後は、商店街かゲームセンターか……空座町にはあまり大きな観光場所はない」
 
「すっ、水族館に……行きたい……な…」
 
「………ん」
 
すると茶渡は黙って歩き出す。
イヅルが迷っていると、「こっちだ」と言われたので慌ててそのあとに続いた。
 
 
 
 
 
「うわぁ……綺麗だ…」
 
イヅルは思わずそう呟く。
現世の水族館というものは知っていたが、訪れるのは初めてだった。
 
「良かった」
 
茶渡は一言そう言うと、また押し黙る。
良くわからない奴だな……とイヅルは思ったが、わざわざ連れて来てくれた事には感謝をしていた。
 
 
すると茶渡がどこと無くソワソワし始める。
 
「……どうしたの?」
 
「いや……………」
 
慌てて視線を外す。
彼が見ていたのは、イルカのショーの予定表だった。
よく見れば、あと10分で次のショーが始まる。
 
イヅルはクスリと笑うと、気まずそうな茶渡の前に立った。
 
「行く?イルカのショー」
 
「え……」
 
「僕、見た事ないから見てみたいな」
 
「…………ん」
 
相変わらずな返答だが、幾分か嬉しそうなのがわかる。
可愛いな……イヅルはそう思った。
自分より体格もずいぶん大きいのに、無口であまり笑わないのに、それでも可愛い…そう思ってしまった。
 
 
 
それからはイルカのショーを楽しみ、館内をゆっくりと回った。
幸い閉館時間が遅かった為、夕方からでも十分に楽しめた。
 
 
「あー楽しかった!ありがとう、茶渡君」
 
「それは良かった」
 
夜道を2人で歩き、茶渡の家の前まで来た。
家と言っても、アパートだ。
 
 
「茶渡君は…一人暮らし?」
 
「あぁ」
 
「じゃあ……泊めてって言ったら迷惑かな?」
 
「…………………問題ない」
 
少し驚いたらしい茶渡だが、すぐにいつもの表情に戻った。
 
「ありがとう」
 
イヅルは微笑むと、背伸びをしてさらに茶渡の服を掴みかがませて、触れるだけのキスをする。
 
「っ…………!?」
 
今度こそ本当に驚き、同時に真っ赤になる茶渡。
 
イヅルは真剣な表情をすると、探るように尋ねた。
 
「こんな感じなんだけど……いいかな…?」
 
茶渡は察する。
そこまで子供ではない。
 
 
「…………………問題ない」
 
返答は、変わらなかった。
 
お互いに穏やかな顔になると、2人仲良くアパートへ入って行くのだった。
 
 
 
 
 
 
 
――――――――――――――
イヅル攻めです、これでも。
途中まで「あれ?どっち?」って感じでしたが。
チャドが攻め……どうしても考えられませんでした。
2010.08.08移動
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ