宿星三國史

□war.7 -休息-
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翔達が去った後の大広間。

「…よくも…董卓様をッ……」

李需は生きていた。
右腕に軽傷を負いながらも彼はひたすら逃げ回り、先程漸く主である董卓の元へ辿り着いたが既に彼の命は絶え、今に至る。

「あいつ等さえ居なかったら、今頃董卓様は…!」

憤怒と憎悪に震える声で呟くと、董卓から与えられた妖力を強め、反暴君連合軍のいる方向へ走り出そうとした。

「全く、しぶといヒトだこと」

「!?」

突如、李需の背後から聴き覚えの無い軽蔑しているかの様な声が耳に入った。同時にただならぬ妖気を感じた彼は恐怖を覚え、青ざめた顔で振り返る。

「ぁ貴方…あ、アタシに何の用なのンッ?!」

「何の用って、
単なる後始末だよ」

其処には何時からか、美しい男が一人佇んでいた。彼はクスクス笑い肩に掛けたファーを指で弄ぶと、右手の爪から弦を伸ばして瞬時に李需を縛りあげた。弦がキリキリと音をたて、徐々に食い込んでいく。

「や、止めなさい!ぁアタシを誰だと思っぁ゛ア゛アアア!!」

「…良い音色だねぇ。これだからヒトの断末魔は堪らないんだよ」

男がクツクツと喉を鳴らし嗤った刹那。李需の躯はバラバラに砕け、一帯に血の池が広がった。
彼は不気味に口端を吊り上げて弦を爪に戻すと、肉塊の元へ歩み寄りそっと心臓を掴み上げ……


グチャッ


なんと心臓を食いちぎり、味わいながら食べ始めた。それを三口で平らげ、次へとばかりに血の滴る肉塊に触れ、口に運んでは愉しむかの様に貪っていく。
数分後。男は骨だけを残しすっと立ち上がると、纏うマントを翻しゆっくりと外へ歩き出した。

「ククク、暴君配下の御魂と器もなかなかのものだったねぇ。感謝するよ、鳧溪様」

男は嗤い、闇と同化してこの場から姿を消したのだった。
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