短編集

□桜の季節
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僕は好きだ。

春が。

桜が。

そして、君が。



〜桜の季節〜




「…や、きょ…や、恭也。」

僕は骸の声で目覚めた。

「ん…何?僕の眠りを妨げると、どうなるか分かってるの?」

僕がそう聞くと、骸は「さぁ?」と、とぼける。

「クフフ…。どうなるんですか?」

「…決まってるでしょ。」

僕は愛用のトンファーを構えた。

「噛み殺す。」

ドコッ!!バキッ!!!

「ひ、酷いですー恭也ぁ!痛いじゃないですか!!」

「知らないよ。僕の眠りを妨げた気味が悪いんだから。」

骸は落ち込んだのか、俯いた。

そし僕が再び口を開いたその瞬間。

ちゅっ。

僕の唇に何かが触れた。

「クフフフ。」

骸。

「ちょ!何するの!?」

「良いじゃないですかー。最近、全然してないじゃないですか。折角付き合ってるのに…。」

確かに、僕たちは付き合っている。もう2か月も前の話。

告白してきたのは骸だった。凄くストレートに。「好きです。」って。

もちろん僕も骸が好きだったから、嬉しかった。これ
以上の幸せはないって思った。


「だ、だからって何もいきなりすること…。」

恥ずかしい。多分、今の僕の顔はモノで例えるなら、食べごろの林檎だ。

「恭也、顔真っ赤ですよ?」

「う、うるさい!!」

ちゅっ。

再び僕の唇と骸のそれが重なった。さっきよりも一層深く深く口付ける。

「…ふ…やめ。」

「いや、です。」 

「最悪。」




恥ずかしかった。でも嫌じゃなかった。僕は骸が好きだから。

散っていく桜の花びらが、骸には良く似合う。

これほど桜の似合う人が他にいるだろうか、っていうくらい良く似合ってる。

だから僕は春が好き。桜も。

そして、骸が大好き。否、愛してる。

「恭也、愛してますよ。」

骸には敵ない。僕も、他の誰であっても。

「知ってるよ、そんなこと。」

「クフフ。そうですね。」

「馬鹿じゃないの。」

「恭也は?」

こんな、意地悪な質問をされたって、答えられてしまう。

「好きじゃなかったら一緒に居ない。」

「素直に愛してるって言えないんですか?」

言えないよ、恥ずかしい。

でも、骸がそういうんなら、言ってやっても良いって思える。

「愛、してる…////」



『春+桜=骸』

僕は頭の中で、こんな数式を思い浮かべた。


END...

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